第7話

 さすがに、限界だった。

 精神の張りつめかたにも、ぎりぎりのものがある。

 しかし、こればかりはどうしようもなかった。どれだけ気象予測がしっかりしていても、突然現れる雷雲までは予測できない。


 通信。


『生きてるか?』


「なんとか。いいかげん来て欲しいなと思ってるところですよ。神様も気まぐれすぎる」


『神を信じてるのか?』


「彼女の言い訳程度には」


『お前の彼女。今日が出発なんだってな』


「ああ。そうなんですか」


 婚約指輪が入っている箱。開けてくれたかな。


『いいのか。会ってやらなくて』


「いま私が会いに行ったら、街がまるごと吹っ飛びますけど」


『お前は、女よりも街か』


「いえ。両方です。私は、夢か恋人かみたいな変な二択は、好きじゃないので」


『まあ、そうだろうな』


 とはいえ、そろそろ限界に近い。


『来るぞ。そろそろだ』


「そうですか」


 死が、近い。

 それはそれで、いい。

 彼女の歌が、聴きたかったな。

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