14
「私の知っている世界?」
「そうです。私たちはこの世界について何も知らない。だからこそ、
リシアさんあなたの知っていることすべてを教えてほしい」
「わかりました」
リシアは話し出す。自分の知っていることを全て。
それを3人は熱心に書き、何度も確認をしてきたりもした。
いつの間にか、日は沈みかけ夕暮れになった頃。
「今日はここまでにしましょう」
「・・・はい」
説明疲れと記憶の掘り出しで訓練よりも疲れたリシア。
やっと終わったと安堵したが、そこにヘロルドは追撃した。
「続きはまた、明日。訓練の小休止時に来てください」
リシアの聞き取りは、そこから数日続けられ解放されたのは5日後だった。
以前のアルファノア国の王城はやや小さかった。
兵舎、王室、謁見の間、食堂といった必要最低限度のものぐらいしかなく
外観と内部の装飾によって、(小さな)美しい城というくらいの認識だった。
だが、日を追うごとに城は増築され、今や城門に城壁、大広間と数多くの客室の
増加によって城の内部は複雑を極め、広くなっていった。
ヘロルドは王のいる執務室に報告のため向かっていた。
この世界の住人からの聞き取りが終わり、周囲の環境がある程度わかったからだ。
ノックをし、入室の許可が出ると部屋の中に入る。
中では、王が虚空を見つめ考えこんでいた。
「陛下、ご報告をお持ちしました」
「なんの報告だ?」
「世界のです。近隣の国と世界について聞き取りが終わったので
その報告に参りました」
「聞こう」
「はい」
書かれた資料を渡した後、ヘロルドはリシアから聞いた世界について
説明をし始めた。
まず、アルファノア国があるこの森はちょうど国と国との間にあった。
北にベルバーン帝国、南にリトビエ王国。
この二国は仲が悪く、山を越えた先にある平野で何年かに一度戦いあっている。
帝国は騎士が中心になって戦い、王国は傭兵と徴兵された民が兵士となって戦う。
質の帝国と数の王国といった構図だ。
リシアは帝国には行ったことがなく、集落に来る前は王国に住んでいたらしい。
だから、帝国に関しては聞いていたことだけしか知らないとのことだ。
王国では、魔獣や野盗といったものと戦う専門の集団、
傭兵ギルドというものがありそこに属して活動していたようだ。
傭兵たちは国の兵士の代わりに戦うことが多く、主に商人の護衛や
魔獣や盗賊の討伐、戦争の参加などだ。
腕っ節さえよければ、誰でも簡単になれて、そのへんの魔獣を狩るだけで
金が入るため、稼ぎやすい仕事だったようだ。
しかし、これらの情報は数十年前の話。
王国で依頼を受け、集落に来たレキスタに腕を買われ、いつの間にか集落でしか
活動しなくなったという。
(やはり、誰かを送り込まないことにはわからないな)
それに、ある程度国同士の交流もしたい。
現状、アルファノアは経済というものがないに等しい。
通貨などは出回っておらず、食料は配給制だ。
国特有の金貨はある。だが、大した量はなく作る施設も素材もない。
もし、あるなら大陸共通通貨で経済を回したい。
本来なら、国専用の金貨を流通させればいいのかもしれない。
固有の通貨を作ると次は為替レートが必要になってくる。
この世界がそこまで高度な経済を持ち合わせているとは思えなかった。
説明し終えた後、ヘロルドは王の言葉を待った。
ジンは自分の考えを口に出す。
「立地は最悪だ。もし、我が国の存在が早期に明るみに出たら二国の奪い合いになるだろう。だから、シキ!」
「ここに」
部屋の影からすっとシキが出てくる。ずっとここにいたようだった。
「偵察能力を高めのキャラを集めて諜報部隊を指揮しろ。国の諜報と防諜に努めるんだ、いいな?」
「はっおまかせを。捕まえた者はどうしますか?」
「情報を聞き出し、おまえの判断で処分しろ」
「わかりました。すぐに取り掛かります」
シキは出てきた時のように消えていった。
「陛下、王国と接触して後ろ盾になってもらうつもりですか?」
ヘロルドは気になって聞くことにした。
「いや、王国は喰う」
「ほう」
「ここより南で肥沃な大地。それだけでも、侵略するには十分な理由だ」
「なるほど、では、しばらく方針はそのような形で」
「ああ、よろしく頼む。あとはもう少し国の情報が欲しいな」
そう言うと、ジンはキャラ一覧から何人か選択すると男女数人が
ジンの目の前に現れた。
跪くキャラ達にジンが説明する。
「お前たちには王国と帝国に行ってもらう。どんな国か見てこい。
それから・・・」
自分の役目は終わった。呼びされた者達を尻目にヘロルドは執務室を静かに出た。
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