好き、だったよ

鹿目 文華

好き、だったよ

私-穂高未来に好きな人ができた。高校生になって本気で好きになった人だった。彼の名前は、高橋博樹。スポーツ万能で背の高い人だった。私と博樹の成績はいい勝負。テストの時期になると、点数の競い合いをした。

「おい穂高!どうだった?」

「まあまあかなー」

「ま、俺のほうができてるけど」

「うっさい!!」

普段はあまり話さない。テストの時期だけの私の楽しみだった。


でも、それも、過去の話。


私には幼稚園の頃から一緒の幼馴染がいた。彼女は、後藤真紀。真紀は、スタイルもよくて、本当に可愛かった。小学生のころ、クラスの男子がみんな真紀のことが好き、という噂が流れたくらいだ。私にとっては自慢の親友だった。真紀には、私が博樹のことが好きというのを伝えていた。真紀は、

「博樹くん、かっこいいものね!未来が好きな人なんてびっくりしたよ!応援するから、進展したら教えなさいよっ」

と言ってくれた。


高校三年生の夏、大学はバラバラになってしまう前に、博樹と夏祭りに行きたかった。そして、恋人に…なりたかった。言葉では怖気づいてしまうから、LINEで誘った。

「29日のすぐそこの神社の夏祭りに行かない?」

沢山悩んだけど、シンプルに誘った。

「ごめん、予定あるんだわ」

返ってきたのは、2時間後だった。

(まあしょうがないか…行きたかったな……真紀誘っていこう)

「真紀、夏祭り一緒に行こうよ」

こっちはすぐに返ってきた。

「ごめん!もう約束しちゃってる子がいて…」

「そっか、気にしないで」

(家の近くだし、花火だけでも見に行こう)

この考えがいけなかった。まだ、恋とは美しい、この感情に浸れたのに。


夏祭りの日。すごく賑わっていた。

(こんな中に私一人ってどうなの笑やっぱ帰ろうかな、家からでもギリ見えるし)

帰ろうとしたとき、

「え…」



そこには、浴衣を着て奇麗に着飾った真紀と、私服の博樹がいた。向こうも気づいたらしく、私たち三人だけ時間が止まったようだった。

「…穂高じゃん。誰かと一緒?誘い断ってごめ…おい!穂高!!」

私は駈け出していた。博樹は私が好きなことを知らない。純粋に断ったことに謝罪しようとしたのだろうが、私には耐えられなかった。真紀は、博樹にくっついたままだったし。死んでしまいたいと思った。

打ちあがる花火を背に、帰路についた。博樹に彼女がいたことよりも、その彼女が真紀だったことがショックだった。

花火の光で私の影ができる。哀しすぎた。もう、涙も出なかった。

もっと早く、好きっていえばよかったのかな。


「博樹、真紀、好きだったよ。」


ポツリつぶやいた。



好きな人二人を失った、花火の夜だった。

もう、何の音も聞こえない。

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好き、だったよ 鹿目 文華 @hazuki812

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