世界が俺をロリコンにしようとしている(連載版)
落花生
第1話バレンタインの告白
●バレンタインの告白
聖バレンタインという聖人が恋人たちの仲を取り持ったために処刑された日――すなわちバレンタインの日に、杉田結城は告白された。
夕暮れで赤く染まる校門の前で、その子は待っていた。
寒さと緊張で震えながら、白い息を吐いて結城を待っていた。他校の生徒が来ることは珍しく、その少女はじろじろと好奇の目にさらされていた。他校でそのような視線にさらされることは心細かったであろう。
それでも、その子は待っていた。
いつまでも、いつまでも。
たった一人の少年のことを待っていたのだ。
なかなか姿を現さない少年に、少女の顔色がどんどんと沈んだものになっていく。もしかしたら、今日はもう会えないかもしれないという悪い予感が浮かんでいたのだ。
そんななかで、沈んだ少女の顔に光が差す。
意中の少年――結城を見つけた少女は、走り出した。
だが、寒いなかで待ち続けていた少女の足はもつれてしまった。手作りのバレンタインのチョコレートも地面に投げ出されて、雪と泥に守れて汚れてしまう。
そのことに少女は涙目になった。
頑張って作ったチョコレートが粉々に砕けるのは、彼女にとってはとても心が痛い光景だった。おもわず涙ぐむ少女に、結城は手を差し出す。
「大丈夫か?」
その時に、少女は確信した。
この人こそが運命だ、と。
「好きです」
少女は、そう語った。
結城は驚いて、目を白黒させていた。生まれてこの方告白なんて初めてのことだったし、告白してきた子のことについても驚きが隠せなかった。
「好きなんです!」
少女は、もう一度告白をする。
だが、少年の反応は変わらなかった。
目をぱちくりさせて驚きを表現している。
「どこの子だ?」
結城の疑問に、少女は答える。
少女は、嬉しそうに答えた。
「はい、津川氷です。榴ヶ岡小学校の小学三年生です」
高校二年生の結城はその言葉に、唖然とした。
「結城さん、大好きです。将来は結婚してください」
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