第13話 オアシス
二十でなってしまったこころの病ですが、恋をしていました。
「顔も名前もわからないのにもう一人男の人がいます。」
そう言って精神科の外来診察室で興奮状態でした。その時初めての入院になりました。自分でもかなりショックでした。
公務員を辞してすぐの出来事です。
入院をして色々な患者さんに出会いました。病棟のホールは皆との交流の場です。
年齢も病状もそれぞれ違う人たちの集まりです。
共通することと言えば日常生活の中で疲労疲弊してこころが風邪を引いた男女の人たちであること。
精神科の病棟は疲れた身体やこころを癒してくれます。
世間では怖い、と言うイメージを持たれている人も多いかと思います。
でも私たち患者にとってはオアシスと言える場所なのです。
初めての入院生活は私にとって快適でした。興奮状態も治まり仲間たちとの交流もありました。
よく病棟の詰所で主治医をつかまえて診察をして頂きました。
診察ではペラペラ流暢に多弁になって話しました。自分の中の思いを出し尽くすかのように。
それが功を奏したのか退院日も思いの他早くやって来ました。
精神科のデイケアをご存知ですか。
退院して人間関係の訓練をするような場所です。社会生活を順調に送れるようにその基盤を作るためのような場所と言えばいいでしょうか。
精神科の患者さんは身体とこころのバランスを崩している人が多いと思います。
そんな状態の人たちが少しでも自分のペースを取り戻すためにある場がデイケアだと思います。
私も退院してデイケアに通わせて頂きました。それが退院後の条件でした。
デイケアはこころの病を持った年齢の違う男女の集まりです。
作業療法士、心理療法士、看護婦さんがチームを組んで二十人前後の患者である私たちのフォローをしてくれるのです。もちろんドクターの元にデイケアがありました。
とはいえ皆、それぞれが強い個性の集まりです。職員さんまでがそうでした。
二十代の大方をデイケアで過ごしました。途中、仕事もしたりしなかったり、デイケアには在籍しながら。
職員さんも私たちによくしてくれました。時間外でもよく面倒をみてくれたのです。
今でもあの頃をよく思います。
楽しかった、ありがとう。
感謝しています。
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