前のエピソード――第23話：ジョブの営業手腕と病魔の影とエピソード

手術などを経て一旦は体調が回復したものの、２０１０年に悪化。２０１１年にはティム・クックを後任に指名し、ジョブズはＣＥＯを辞任します。そして２０１１年１０月４日、アイフォーン４Ｓが発表された翌日に５６歳という若さで死去。２０００年にＣＥＯ就任。同年、アイチューンとアイポッドにより音楽事業に参入。

　音楽事業をパソコンと並ぶアップルの事業の柱にした。数千曲の音楽データを気軽に持ち歩き、スクロールホイールで手軽に楽曲を選び視聴することができるアイポッドは、世界中に驚きを与えると同時に、多くの人々を魅了した。2007年1月9日、マックワールドで９年ぶりに携帯コンピュータ事業に復帰した。

　アイフォーンはスマートフォン大ヒット、ＣＥＯを退任する２０１１年までに、アイフォーンは総売上高の半分を占めた。その後２００３年、ジョブズは膵臓癌と診断されたが、幸いにも治療可能な症例だった。しかし家族を始め、周囲は、すぐに手術をうけるように忠告したが、東洋文化を尊重し、西洋的な医術を頑なに拒否した。

　絶対菜食、ハリ治療、ハーブ療法、光療法などを民間療法などを用いて完治を図ろうとしたが失敗に終わった。そして２００３年８月に摘出手術を受け療養後復帰した。２００５年６月１２日、スタンフォード大学の卒業式に招かれ、「Stay hungry, stay foolish」というスピーチは、多くの共感を持って迎えられた。

　２００８年６月９日、第二世代アイフォーン・３Ｇ発表時に痩せた姿で登場し、２００８年９月１０日の第四世代アイパッド・ナノ発表時に健康面に触れ、健康不安についての臆測を一掃した。ところが、肝臓への癌の転移が判明していて容態は深刻な状況だった。

　同年１２月１６日に、２００９年１月６日に、あらためて「体重減少はホルモン異常のため」との書簡を発表し、重病説や辞任説を否定し「アップルのＣＥＯとしての義務遂行が継続できなくなったら最初に取締役会に話す」と宣言したが、１月１４日に「６月末まで治療に専念」するためのＣＥＯ休職を発表した。

　しかし実際には２００９年３月に肝臓の移植手術を受けていて、医師からはジョブズの肝臓は４月までもたないと宣告されていたという。日本では、２０１１年３月１１日の東日本大震災、その後の東電福島第一電発の原子炉溶融、爆発、大量の放射能汚染の問題で、日本中が気が滅入っていた。

　まさに、その時、２０１１年１０月５日、膵臓腫瘍の転移による呼吸停止によりスティーブ・ジョブズは、パロアルトの自宅で死去した。享年５６だった。２０１２年５月１７日、ソニーの２０１１年度決算が９.６％の減収、最終赤字４５６７億円と判明した。

　決算発表後、２０１２年度はエレクトロニクス事業の黒字化で営業利益１８００億円予測を立てたが、２０１２年４月１０日、２０１２年３月期の連結業績見通しを下方修正し、２０１２年３月期の業績下方修正は４回目だった。売上高の６兆４０００億円、営業利益９５０億円の赤字、税引前利益の１１５０億円の赤字は据え置いた。

　しかし、当期純利益を２２００億円の赤字から５２００億円への赤字に修正。ソニー史上最悪の決算だった。その責任問題が話題になりソニー・プレーステーションの赤字問題が浮上した。当時・ソニー・コンピュータエンタテインメント・技術部長の成宮賢に本社首脳部から秘密裏に割増退職金７千万円が提示された。

東日本大震災と東電福島原発事故、スティーブ・ジョブズの死、プレーステーションの赤字問題の三重苦で苦悩の日々を送った。１人悩み続けた時、２０１２月の８月１日、姉の成宮照子の住むアメリカ西海岸のサンディエゴに飛び立った。そして８月５日、ジョブズの眠るサンノゼ・パロアルトのアルタ・メサ祈念公園の墓地を訪ねた。

　墓の前で、手を合わせて、拝むと、曇り空から、一筋の太陽に光が、成宮賢の方にさして、まるで、ジョブズが、成宮賢に、よく来たなと歓迎しているように思え、目をつぶると、在りし日のジョブズの優しい笑顔が浮かんだ。彼は、外部には、こわもてだったが、仲間や友人には、いつも謙虚で、気弱な一面を持っていたことを成宮賢は思い出した。

　ピクサーの買収の話の時も、一番、最初に聞かされたり、いつも、成宮賢は、ジョブズに、ドキドキ、ハラハラさせられた事が懐かしく思い出された。その後、姉の成宮照子も２年前に定年退職していた。そして、成宮賢が、仕事一筋で、結婚していない事を知っていて、ソニーアメリカの時に、一緒に、働いていた。スザンナを家に呼んで、紹介すると言ってくれた。