第22話:子供と仕事の失敗と成功、アメリオとの戦い

 翌年1991年、二人はヨセミテ国立公園で結婚式を挙げ、1991年9月には長男のリード・ポール・ジョブズが誕生。成宮賢は、結婚式に招待され、長男出産の時にも祝電を送ったのは言うまでもない。ジョブズの仕事の方は、ネクスト社で、ワークステーションとして実績がないのに高価などの理由で苦戦を強いられていた。


 その後、1992年にIBM互換機で動作するNEXT・STEPのPCバージョンが発表された。しかし1993年2月10日には全社員530人のうち280人を退職させハードウェア部門をキヤノンに売却し、NEXTはソフトウェア会社へと転じる事となり、社名もNeXTソフトウェアへと変更した。


 しかしネクストキューブは開発と運用のしやすさから、世界初のWebサーバとして用いられたという大きな功績も残している。また、世界初のWebアプリケーションサーバ開発運用環境Web・Objectsが開発・発売された。NEXT・STEPとその開発機能は、Webサーバなどを比較的簡単に開発構築・運用できる利便さを兼ね備えていた。


 そして、今日のMACオペレーション・システムにも受け継がれている。NEXTは、ソフト事業に特化した後、世界初のウェブアプリケーション開発・運用環境であるWeb・Objectsを出荷した。NEXTSTEPも自社内開発を行う金融機関などに受け入れられ、まずまず安定した経営をしていたが、株式公開は、出来なかった。


 1995年末、ジョブズは、友人でオラクル創業者エリソンと、共同で経営の傾いたアップルの買収を画策する。エリソンは、ウインドウズを打倒すべく、ネットワークコンピューティングを提唱しジョブズとアップルによって実現しようと考えていたが、最終的に、ジョブズと話が合わず、買収提案が流れた。


 ジョブズは、1996年の11月頃、アップルが自社内でのOS開発が暗礁に乗り上げ、次期OSの基本技術を外部に求めているという話を聞き、アップルにNEXT・STEPを売り込むべく、当時アップルのCEOだったギル・アメリオに電話をかけ1985年の退社以来、久しぶりにアップルを訪れ、アメリオやマークラ達と話し合いを持ち、簡単なプレゼンテーションを行った。


 アメリオは後に、この時のジョブズの対応を愛想の非常に良い、好感の持てるものだったと言っている。アメリオとアップルCTOのエレン・ハンコックは、次世代Mac オペレーション・システム・マッキントッシュを動かすための基礎的プログラムの候補として、Be社のBeオペレーション・システム、サン・マイクロ・ソラリス、マイクロソフト・ウインドウズNT、NEXTSTEPの4つを挙げていた。


 元々アメリオは、ワークステーションやサーバで用いられ、堅実に動作するUNIXの中でも、特にカーネギーメロン大学で開発されたMachに目を奪われていたが詳しくて調べるとNEXTSTEPが最適と考え、特に、WebObjectsの出来に感動し、ジョブズからの売り込みがなくても交渉は行うつもりでいたのだった。


 ジョブズは、NEXTSTEPの良い面も悪い面もすべてさらけ出し、完璧なプレゼンテーションを終えMac オペレーション・システムをNEXT・STEPに決まり1996年12月20日、アップルがNEXT社を4億ドルで買収することに合意、次期オペレーション・システムの基盤技術としてNEXT・STEPを採用すると発表。


 ジョブズはアップルに非常勤顧問という形で復帰し1997年2月、正式にNEXT買収が完了した。アップルに復帰する際、買収代金の一部として半年先まで売却できないとの条件で150万株の株式を譲渡されていた。しかし、アップルの復活を半ば諦めていた事もあり、期日が来るなり、またしても1株を残して即座に売却した。


 ジョブズは経営の実権を奪取すべく、アメリオを追い出すための画策を講じ、「アメリオはいまだにアップルの業績を向上させられない」として、全ての役員を味方にし、アメリオをCEOから引きずり下ろし、7月にアメリオが退社すると経営陣は、ジョブズにCEO就任を要請したが、ジョブズは多忙を理由に断った。


 当時、筆頭株主であった立場を利用し役員たちに辞任を迫る。結局、マイク・マークラを含む経営陣はほとんどが辞任し、その後任としてエリソンやジョブズと縁のある人物が就任した。


 1994年8月に、ボストンで開催されたマック・エクスポでは、議決権のない株式譲渡と技術提携・特許裁判をしないための条件という名目を条件に、マイクロソフトから1億5千万ドルの資金提供と、マック版のマイクロソフト・オフィスとインタネット・フォー・マックの提供を受けることを柱とした業務提携を発表する。

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