第16話:ソニーCDプレイヤーとパソコンを新発売

 また、価格は、CDの本格的普及をめざそうという当時会長の盛田が、5月万円を切る価格でいこう。最初は赤字でもきっと後で儲かるはずだと方針を出した。1号機の16万8千円に比べて3分の1、5万円では赤字で原価率200%となった。CD発売2周年の1984年11月に「D-50」は発売された。


 4万9800円という画期的な価格だけでなくCDジャケット4枚分の厚さでリモコンとリピート演奏機能以外、何らCDP-101の機能と変わらない。この事が、世の中にセンセーションを与えた。難しい技術を詰め込んだCDプレーヤーが5万円を切って売り出された。この事実に社内の関係者自身も信じられない気がした。


 しかし、盛田さんが決めたこの価格戦略が、その後のCDビジネスを大きく飛躍させた。このD-50は、低迷した市場を予想以上に喚起する起爆剤となった。これほど売れるとは思わなかった。と担当した当事者でさえびっくりする程の売れ行きをみせた。原価率は、1年半で改善され黒字に転換。


 このD-50によりCDの新しいマーケットが開拓された。各社のCDプレーヤーの価格が下がりソフトも一斉に売り出され業界全体のCDビジネスも本格的に立ち上がった。ちなみにD-50の流れを汲んで、その後商品化された小型ポータブルタイプのCDプレーヤーは、ウォークマンのように歩きながら音楽を楽しめる。


 気軽にという位置付けから「ディスクマン」とネーミングされ、広く親しまれた。CDビジネス、ソニーのオーディオビジネスはこうして再活性化されていった。1983年秋には、CDP-101の10分の1のメカデッキ・演奏機構部をつくる実力が培われるようになり、やがてCDをさらに飛躍させるモデルが登場したのである。


それは、当初から大きな期待がかかっていたモデルであった。その後、CDにソフトウェアのデジタルデータを書き込んでパソコンで使えないかと言うことになった。その成宮賢のアイディアが社内で取り上げられ、その後、ソフトウェアや膨大なデータの格納用のメディアとして、汎用されるようになった。


 あんた成宮時達さんに見込まれてるから明日にでも電話して、おじいさんに200万円借りて、送金するように連絡しなさいと言った。はい、了解しましたと、おどけて言うと図々しい弟の面倒見るのは大変だわと大笑いした。この年は、姉の成宮照子に同行し米国の南部は、マイアミ、ヒューストンへ出張していた。


その他、米国の西部は、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、サンディエゴ、ラスベガス、ダラス、ワシントン、シカゴ、ボストン、デトロイト、トロントと出張の毎日だった。そして、営業報告を書かされて、忙しい毎日だった。やがて1981年となった。その後、姉の成宮照子が1981年3月にアップル株を1万ドル分で、1株0.4ドルで2万5千株買ったと連絡があった。


 そのため、すぐ1万ドル分として2百万円をおじいさんから入金があったと知らせてくれた。笑いながら、成宮照子は、実は、私たち夫婦も、あなたと同じ分だけのアップル株を買ったのよと笑いながら言った。その後、1981年7月に成宮賢は日本に戻りソニー製のデジタル・グループに入り、主にハードエンジニアとして活躍した。そうして、1982年にソニー初の8ビットパソコン・SMC-70を新発売した。


 そのパソコンの特長はフロッピーディスクを装着しテンキーを外付けにしコンパクトにした点だ。翌年1984年、キーボード一体型のビギナー向けパソコン。ソニー独自のBASICで作動する8種類のソフトを標準で同梱したSMC-77、続いて、MSX規格のパソコンがブレイクする先駆けとなったモデル。


 家庭用のテレビと接続でき、価格も5万円台。愛称は「HITBIT」のHB-55も発売した。そして1985年10月30日、成宮賢は、日本に戻り、コンピューター・アニメーションの時代が近い将来が、きっと来ると報告書に書いた。


 すると、父が、この話を芸術畑出身の当時の社長・大賀典雄の部屋に、成宮賢を連れて行き話した。大賀社長が、ソニーもアメリカの映画業界に興味を持っていると話し、社長の直属のプロジェクトチームに入れと言われ了解した。そして、成宮賢は、正式に、ソニー・アメリカに所属となり、姉の成宮照子と同じ、フロアーで仕事を開始した。

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