第188話 文化祭
数週間後に行われた文化祭では、珍しく招待試合がなく、俺たちボクシング部は男子陸上部と合同で、執事喫茶をすることに。
隣では女子陸上部がメイド喫茶をしていて、千歳のメイド姿に期待するばかり。
執事喫茶のブースに入ると、徹は俺の顔を見るなり黙り込み、小さく縮こまるだけ。
完全に呆れながら衣装を受け取った後、陸人と部室に行き、執事の衣装に身を包んだ後、執事喫茶のブースに行き、学と話をしている制服姿の千歳に切り出した。
「あれ? メイドは?」
「あれは女子陸上限定だよ」
黙ったまま隣の女子陸上部のブースに行き、部長である岡田に切り出した。
「千歳がメイドじゃないんだけどなんで?」
「千歳はボクシング部のマネージャーじゃん。 何? 見たいの?」
「うん。 見たい」
「でもなぁ… 衣装がネタで買ったやつだから、かなり際どいよ?」
「いいよ。 それ着せて。 ついでにポニーテールにしてくんね?」
「うわっ! エロ… 学校で脱がさないでよ?」
「補償はしない」
冗談を交えながら話していると、福岡が探しに行ったんだけど、それと同時にメイド服を着た千夏ちゃんが近づき切り出してきた。
「あの… 陸人君も執事なんですか?」
「ああ。 着替えてたよ」
返事をしただけなんだけど、千夏ちゃんは俯き、顔を赤らめていく。
「行ってみれば?」
そう切り出したんだけど、千夏ちゃんは黙ったまま動こうとせず、半ば強引に腕をつかみ、隣のブースに連れて行った。
陸人の前に千夏ちゃんを置き、何も言わずに互いを見て顔を赤らめる二人を眺めていると、薫に呼ばれてしまい、二人に何も言うことができず。
仕込み準備を手伝っていると、ブースの入り口から福岡に呼ばれた。
福岡を追いかけて歩き、なぜか女子陸上部の部室に入ると、千歳は胸元と背中が大きく開いたメイド服に身を包み、ポニーテール姿をし、居づらそうにている。
想像以上にセクシーな格好をしている千歳から思わず目をそらし、岡田に切り出した。
「ネタで買ったってこれ?」
「うん。 かなり際どいって言ったじゃん」
「そりゃだけど… エロすぎじゃね?」
「はぁ!? 着せろって言ったのは自分でしょ!? 『すぐ脱がすからいい』って言ってたじゃん!」
「言ってねぇよ! 補償はしないって言っただけだろ!?」
岡田と言い合いながらジャケットを脱ぎ、千歳の肩にかけると、2人は冷やかすような声を上げ続けていた。
「で? それ着せて外に出していいの?」
「ダメ! 絶対ダメ!」
「んだよ… これ着せるのにめっちゃ苦労したのに…」
2人はブツブツ言いながら部室を後にし、千歳はジャケットを手渡してきた。
「もう着替えていいでしょ?」
恥ずかしそうに告げてくる千歳の腕をつかみ、記憶に残るようにまじまじと見ていると、千歳の顔はさらに赤くなっていく。
「よくこんなの着たな」
「だって… 2人して『卒業したら海外に行っちゃうんだから、貴重な姿を見せてあげろ』って… 外に出るのは嫌だから、『連れてきて』ってお願いしたんだよ」
「俺のためだけに着てくれたって事?」
「…もう一生着ないもん」
視線をそらしたまま、不貞腐れたように呟く千歳が可愛すぎて、思わず強く抱きしめた。
「千歳、戻ったら一緒に住もう? ずっと二人で一緒に居よう? いつかファイトマネーだけで暮らせるようにするからさ」
「…プロポーズみたい」
「プロポーズしてんだよ」
千歳は俺の胸に顔をうずめ、強く抱き返してきていた。
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