第2問―クイズとはサバイバル?―

クイズ部を探すだけで一苦労だった。部員勧誘の張り紙など無く、職員室に書類の整理をしていた教諭に尋ねても曖昧な情報しかなかった。


「クイズ部やっと見つけた」


「うわぁー、まさかこんなにも探すなんて!これもクイズなのかな?」


知沙は両手で麗しい黒髪を激しく掻く。

髪が乱れてるぞ指摘しようかと考えたが疑問を聞くことにした。


「これもクイズって?」


「ほら実力を測るために敢えて見つからないようにしているんだよ。

クリアーした強者を来るように、さぁ」


なるほど、なるほど。


「そうか。だったらドアの前にクイズ部と書かれた紙が張っているアレは?」


ここがクイズ部だと一目で分かるようなことしたら試練でも何でもない。

その意図を妹であった知沙は困ったような笑顔に変化する。


「そ、それは…たのもー!」


知沙の悪い癖だ。

都合が悪くなれば雑に応える、俺以外ではそんな対応はしないけど。

クイズ部に足を踏み入れた俺達の前に広がるのはインドアな雰囲気。そして――


「あれ、挑戦者くんかな?」


女神が天真爛漫な笑みで歓迎した。

新雪を思わせる柔肌、透明な光沢感のある栗色のセミロングヘアー、理想的な体型をした女の子だ。


「うーん、そうです。どんな所かなとお兄ちゃんと一階に好奇心で来ました!」


美貌の前に臆する事なく知沙はいつもの勢いで喋る。


「仲のいいのですね。私に挑みにきた雰囲気では無さそうですね」


「そうだよ。面白かったら入部しようと思ってはいます」


「ほ、本当に…」


屈託のない知沙の言葉に女神は伏せると肩を震わせる。

な、なんだろう怒らせるような発言はしていない。

女神は勢いよく顔を上げる。


「入部希望者と言うのはマジですか!?」


キラキラと顔を輝かせて知沙の両肩を置いて確認をする女神。

かなり…興奮しているようだ。


「マ…マジです。はい」


「やったー!念願の希望者…しかも二人もだ。長い戦いだったぜぇ」


お淑やかな印象は崩れました。

女神は危険な薬でも使用しているのかハイテンションでした。

この反応から察するに女神しかいないのだろう。


「「………」」


「はっ!ご、ごめんねぇ。ちょっとお姉さん舞い上がっていたみたい…えっへへ」


頬を赤く染まり照れ笑いの女神は…かわいいのでオールOKにしよう!かわいいは正義なのだ。


「ねぇ、お兄ちゃんどうにかして出ない?

なんだかヤバい人だよ」


耳元で知沙は声を潜めて部室を離れようと提案してきた。

しかし俺は首を縦に振らない。女神と話す機会なんて俺の人生で2度とないだろうから。


「クイズやりたいです!」


「はぁー、」


隣にため息がこぼすのを聞こえたが気にしないことにした。苛立っていそうだし後でケーキでも奢ろう。


「はい。それじゃあ得意なジャンルはありますか?」


「えっ?得意なジャンルですか…」


腕を組んで何をしようかと悩んでいると横で知沙が冷めた目が刺さる。


「アニメやマンガ、ゲームでも用意していますよ」


ま、まさか女神はオタク知識もいけるのか?

俺が得意なジャンルはそれだけなので、答えは出た。


「それじゃあアニメのジャンルでお願いします」


「かしこまりました!」


おぉー!ビシッと軍隊がなどがする敬礼は全力で、かわいいと叫びたい。

左の腹部から知沙の肘に突かれる。

俺と知沙は教室にもある種類の机に座る。

二人分の机は中央に早押しボタンが置かれている。

どうやら解答はこれで押すことらしい。


「二人とも座ったね。ではクイズを始めます。わぁー、パチパチ」


「パチパチ!」


盛り上がる女神の拍手に釣られるように知沙も楽しそうに叫びながら拍手。

俺も拍手をするが二人のようにイェーイとするタイプではない。


「説明をしましょう。私は即興的な出題をします。それで二人は答えが出たら、そのボタンを押す。 …拙い説明で理解してくれたかな?」


自信なさそうに眉を八の字にして尋ねる女神。アイドルみたいな仕草にドキッとするが顔に出さないよう気をつけよう。


「あっ、はい。分かりやすくて理解はしました」


「ふふ、ありがとう」


褒めたつもりじゃなかったけど、お礼をいただき笑顔を向けられた。

女神は自己評価が低いのかな?と疑問を抱いたが今はクイズに集中しよう。


「では一問目です。今では毎週放送アニメが日常的になりました。その先駆者と言えば何でしょう…か!」


爛々らんらんとした明るさに内容よりも嬉しそうな笑みを見て悲しくなってきた。

入部者がそれだけいなかったのだろう。

涙腺が危うくなったが今はクイズに専念だ。


「あれ…難しいぞ」


「むぅー、わたしも分からないよ!」


「フッ、フッ、フッ…どうやら後輩は知らないようだね。正解は

手塚治虫てづかおさむ先生なのです。

ちなみにアシスタントを初めて採用した人でもあるのです」


人差し指をクルクルと教鞭を執る女神の薀蓄うんちくに今期の大半を見るほどアニメ好きの

俺でも知らない情報だった。


「「へぇー」」


「ふふ、それでは次は答えれるかな。第2問目パチパチ!」


「わぁーー!」


二人みたいにワイワイと騒げない。


「わ、わー…」


さすがにしないわけにはいかない。


「二問目です!コホン…社会現象した鬼滅の刃の主人公の名前と言ったら?」


問題内容に俺は戸惑った。社会現象をしたアニメと現在進行系だとイージー過ぎる。昭和の時代でなら少し難しくなるのに、簡単すぎないか…いや裏があるのか。

知沙は「はい、はい!」と元気に手を挙げた。


竈門かまど炭治郎たんじろう


「…うーん、正解。やっぱり解るか」


「えへへ、有名ですので」


次々と出題する問題は俺と知沙はすべて間違わず答えていく。

先の一問目が難しいのに、まるで垂直な道を登っていたのが突然に平らな道となったような落差が激しかった。


「どうでしたクイズは?」


両手を後ろに組み突如こうして始めたクイズの感想を求められた。

俺は知沙と目を合い、それから共に頷き視線を戻す。


「知っている問題を答える瞬間は気持ち良かったです。それに…

答えれなかったクイズの答えで

知識は増えて、お得感がありました」


「すごーく、楽しかったよ」


俺と知沙はクイズの楽しさを知った。


「よ、良かった」


字面通りに胸を撫で下ろす女神。


「それで、どうかな入部の話ですけど…」


いつものように帰宅部の予定だった俺は。


「仮入部からお願いします」


「お兄ちゃんと同じく」


俺達は快諾すると女神は一瞬なにを言われたのか理解が出来ずに止まっていたが段々と快諾したのだと分かると飛び跳ねるほど喜んでくれた。

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