第7話  賢者様の辛い思い出 Ⅰ

 私、アルレイシアは13歳の時に史上最年少で賢者マギとなった。


 元々魔力は生まれつき高かったんだけれど、それに加えて35年と言う人生経験に看護師スキルも健在でして……まあ当たり前っちゃ当たり前なのだけれども医療技術のセンスがいいと絶賛されちゃって、あれよあれよと位は上がり気がつくとなってたんだよねぇ賢者様にさ。


 確かに賢者になれたのは普通に嬉しかったよ。


 人間異世界へ転生したとしてもどんなトコでも頑張れば何とかなるんだって。


 幸せだなぁって素直に思ったもんよ。

 でも賢者とは言え万能じゃないんだよ。

 Drが患者さんの命を全て救えない様にね。


 私も前世では沢山の患者さんを看取みとってきたよ。

 10、ううん優に100以上は確実にある。

 だってそれがお仕事だったんだもん。

 どんな経緯であっても自分が最終的に選んだ仕事だから死ぬまで必死に働いていたよ。


 そして私が生きてた頃もまた今も変わらない看護観てやつ?


 患者さんの命が終えるのは患者さん自身の寿命だって事。

 私らNsが患者さんへ出来る事はこれより先死へ向かうにしろ、助かるにしてもその生きてる時間を寄り添い看護する。


 人間誰しもおんぎゃーと産まれ落ちた瞬間から一歩ずつだけれどもそれは確実に、そこは誰しも死へと向かって歩いているんだもの。


 そうこれは誰にも止められない。


 その人間の死が早いのかはたまた遅いのか。

 もし病気になった時は手を差し伸べて元気になれる様に援助をするし、万が一死と向かい合わなければならないのであれば、残された時間を出来るだけ悔いが残らない様にお手伝い出来ればいいんだけれど……ね。


 ただ、しちゃあいけないのは医療従事者としてって事。


 普通にミスを犯せば直接命に係わるからね。

 まあ医療従事者も人間だから全くミスはないって事は無理な話だよ。

 でも大事なのはそれでもが大切なんだよ。


 よくTVドラマで患者さんが亡くなったっらNs達がよく泣くやん。

 反対に冷静だったら責められるのってあれはないと思う。

 それとも私は沢山の死と向き合う中で、普通の人とは違い少し鈍感になっていたのかもしれない。


 でもね、心の中では亡くなられる瞬間。

「お疲れさま」

「いっぱい頑張ったね」

って、心の中だけで思うんだ。


 まあお仕事だからって言う事もあるかもしれない。

 割り切ってお見送り出来るのは――――ね。


 だけど実家のわんこが危篤とか亡くなったりしたらそこはめっちゃ動揺して目が腫れるまで泣いちゃえば、その日はお仕事が出来なくて休んだ事もあるよ。


 本当に辛すぎて冷静に仕事が出来なかったからね。

 うん、これはあくまで私個人の意見だから。

 全国のNsがそうとは限らないし、もっとちゃんと対処してる人は沢山いるんだからね!!


 だから異世界ここへ転生をして賢者様になった頃最初は皆が元気で幸せで、楽しく美味しい物をお腹いっぱい食べられる世の中になれる様に頑張ろうって烏滸がましくも思ってしまったワケ。


 馬鹿だね―、本当に馬鹿だ私……。


 転生してまるで何でも出来る最強勇者様スーパーマンみたいな気分になっちゃうなんて……さ。


 そう、あれはその賢者様になって間もなくの頃だった。

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