第1話  私は私

「ってお肉っ!! 私は〰〰〰〰!!」



 夢?

 あぁ昔から見続ける悲しくも悔し過ぎる夢。

 でも、幾ら昔からとは言え、おんぎゃーと生まれて直ぐに見る夢じゃあないわよ。

 でも仕方ないのよね。

 あの夢は前世で私が生きていた意識のある最期の瞬間だったからさ。



 そう、あの後溜まりに溜まった過労が元で心筋梗塞を発症しちゃって意識不明となり、治療の甲斐もなく35歳の女盛りに……いやいやいやいや、彼氏の一人も作らず花の独身?

 うん、綺麗な乙女のまま儚く死んじゃったんだもん。


 でも本当に最悪っちゃ最悪だったのは意識を失った後だった。


 同僚や若い医師達にさ、まだだ~れにもお見せした事のない私の身体を……とは言えよ。

 別にそこはお見せ出来る様なのものでもなかったのだけれどもね!!


 他人様の裸はもう星の数程……とまでは言わない。

 まあ看護師ですからね。

 それなりに男女共にそう言うモノは見慣れてはいる。

 でもだからと言って自分の裸を見られる事にはそれなりに抵抗――――と言うのだろうか。

 兎にも角にも絶対に見られたくはなかったと言うのにだ!!


 そりゃあ心筋梗塞で意識を失って救命処置故に仕方がないのだと、頭の中ではしっかりと理解はしているけれどもだ!!

 

 35歳の行き遅れとは言えそれなりに羞恥心と言うモノがそれなりにまだ残っているのですよ。

 それなのに処置と言う名の下で色々とめっちゃ見られるわ触られるわ……していたんだろうな。


 ただ向こうさんは仕事だから何も思ってはいないとわかっていても――――って⁉


 あ゛あ゛――――当然必死に隠していたも見られてしまったのだ。


 ついでに今日死ぬなんて事も考えもしていなかったから下着だって確か……上下違うものだしそれにしっかりと着古したもんだったと思う。


 う゛ぅ〰〰〰〰だ、だって着古したもんって妙に身体に馴染んで楽……なんだよね。


 日勤と違って夜勤だし、然も日中働いてからの深夜勤務なんて疲れているからっ、どうしても楽な格好と言うかストレスフリーを求めたって悪くはないでしょ!!


 ま、まあこんな所が女子力落ちているとか言われるんだけれどれもさ。

 でもねぇ、仕事にばっかり明け暮れていたらそんな事言ってられないし……。


 きっと身体に一杯これでもかと言わんばかりに点滴とか挿管そうかんもされたんだろな。


 あぁ前歯、何本か折れたのかもしれないな。


 挿管は呼吸確保の為に鼻または口より挿管チューブと言う結構ぶっといモノを突っ込むんだけれど、何時も介助していて思うんだよね。


 あぁ、自分はされたくないわってね。


 だけど職場で倒れたのであれば問答無用でフルコースでお料理されているに違いない。

 バルンも挿入れられたんだろうな――――って正直に言ってこれが一番嫌なのだ!!


 皆の見ている中でおしっこの管って……。

 私はね、ああもう時効だと思うから今ここではっきり言わせて貰えればよ、自分があれやこれをするのはいいの!!

 で、でもっ、自分がされる側になるのはめっちゃ嫌なのだ!!

 怖いのも痛いのもお断りなのよ!!



 ま、まぁ日本全国のナースが私みたいな……とは違うと思うよ。

 私みたいに仕方なくナースになったのではなくて、私には絶――――っ対にないだろう看護に対して崇高な理念を持ってるナースだって沢山いると思うのだ……よ。

 

 とは言えよ、幾ら仕方なくナースになったからとは言っても必要な処置は今まできちんと行ってきたし、そこはプロなのだ。

 出来得る限り患者さんに苦痛を与える事無く正確にそして患者さんのプライバシーにもしっかりと配慮してきたし時々TVやネットで騒がれる暴力行為なんて一切してはいない!!


 ここ大事だからね。


 何て話している間にそんなこんなで呆気なく死んでしまえば最後の最後にお腹ん中に溜まっているだろうう○こもしっかりと掘り出され、口や耳鼻、膣や肛門の穴と言う穴へ綿花をこれでもかとしっかり突っ込まれればあ゛あ゛……苦しいってわからないよね。

 死んじゃっているだけに……。


 でももう終わた事だしさ、戻りたいと思ったとしてももう戻る身体は既に燃えちゃって骨……だし。

 それに死んで直ぐなのかはたまたどのぐらいの時が経っているのかなんて分かんないけれど、今の私はなんと生まれ変わってしまったのよね。


 し・か・もっ、異世界⁉


 漫画か物語みたいじゃない。

 うひひ、思わず余りの事で笑っちゃうわ。


 それも外見上は15歳。

 亜麻色の髪を二つに分けて三つ編みにしているん。

 とーっても可愛いの。


 おまけに瞳は何と金色だよっ、そんなものリアルで見た事ないって言うの!!

 背格好は少々小柄だけれどスタイルはまずまず。


 前は黒髪に黒目で髪の質は猫っ毛だったからね。

 少し伸びたかな~って思って三つ編みをしてみてもちょろちょろ尻尾って感じだった。

 だけど今回は豊かな髪の量だけれど剛毛じゃないし、自分で言うのもなんだけど触っていてつるんとして飽きないのよね。


 前世は身長も割と高かったから、昔からずっと小柄な子がめっちゃ羨ましかったのだもん。


 それに肌よ肌⁉


 やっぱ年には勝てないって生まれ変わってからその点だけは激しく痛感したわ。

 35歳の時でも年の割にハリ艶あるやんって思っていたのだけれどさ、実際にこうやって触ってみれば全然……ううんっ、まーったく違うんだよね。


 それにそれにね、腹肉がないんだよ!!


 前世ではあんなに邪魔だった腹肉……。

 それが今生ではないのだよ!!

 これは本当の意味でめっちゃ嬉しかった。


 ○ザップも何もせずに私は腹肉と言う大きなお荷物様とさよならできたのだ。

 そうして今回こそは失敗しない様に物心ついた時から腹肉の、スタイルと言うモノをしっかりと気をつけていたいのだもんね。


 勿論腹肉の次は――――二の腕もない!!


 ふふ、まあ何の因果か無事にこうして生まれ変わったとわかった時に決めた事があるの。


 そう、もう絶対に過労死なんてしない。

 朝から晩まで馬車馬の様に働き続けて恋も何もかも放置する様な人生なんてもうしない!!

 

 この人生での私の真の目標は、悠々自適でまったりとしたスローライフって奴を満喫するの!!



 それから因みに私はこの国――――ラインフェルト公国の公女、つまりお姫様って奴だったりする訳だから憧れの三食昼寝付き!!


 と、皆思うでしょ。


 まぁ金銭面的には困らないんだけれどお姫様業って想像していたモノよりも結構疲れるお仕事なのですわ。


 おまけに外見15歳、心は35歳なんてギャップがあるものだから妙に現実主義に考えちゃうし、時々こんなんでいいのか……なんて悩んだりする事もあるけれどもなってしまったものはしょうがない。



 うん、先ずはお姫様業を頑張りつつ……でも過労死はしない程度にね。

 このラインフェルトで新しい人生ってものをしっかりと満喫するわ。



 コンコンコンコン



 あ、もうこんな時間だ。

 起きなきゃいけない。


 さあて……とっ、今日も一日頑張っていきますかぁ。

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