等身大ヒーロー

第1話 ヒーローは空を飛ぶ

　朝、起きるとテレビをつける。

　液晶の中で繰り広げれられる、どうしても身近には感じることができない政治、芸能、ゴシップの嵐。

「昨日行われた会見の模様をお伝えいたします」

　もう知っている。政治家の黒いうわさに関するものだ。

「続いて、不倫疑惑の続報です」

　これも知ってる。女癖が治らない俳優（良い年したおっさん）の話だ。

　今の世の中、インターネットやSNSを見れば、情報はすぐに手に入る。

　正しいかどうかはわからないが、とにかく早く情報を手に入れることができ、ただの視聴者がニュース番組の意義を考えてしまうほどだ。

　朝、決まって食べるのはパンだ。米よりもパン派だ。

　トースターには、いつものように食パンを2枚セットする。

「次のニュースです」

　どうせまた、どっかの誰かが拡散した、どっかの何かについてだろう。

　もしかしたら、今スクロールしているネット記事についてだろうか。

「昨日深夜、東京都で未確認飛行物体の姿が確認されたということです」

　え。

　どういうことだ。

「目撃者によると、人型の物体が東京都上空を飛行していたとのことです」

　え。

　なんで。

「目撃者により提供された写真が、こちらになります」

　深夜の東京。

　上を見上げても、ほとんど星が見えない夜の空。

　今どきのスマホ内蔵カメラは素晴らしい。

　どんな瞬間も逃さず、鮮明な画質でユーザーの満足度をこれでもか、と満たすのだから、もはや恐ろしい。

　チーン。

　パンの焼けた良い匂いがするが、今はそれどころではない。

　そこには、両腕を突き出して、マントをはためかして空を飛んでいる、人の姿をした何かが映っていた。