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私個人の荷解きや一緒に運ばれて来た資材、機材、物資の解包、整理、収納に初日と翌日の半分を使い果たし、本格的な会議にこぎつけたのは到着二日目の夕方からだった。
大先生二人と違い、ここで警備や雑務をこなしてくれる特務機関員の人たちは実に愛想よく、小娘な私の指示にも機嫌よく従ってくれた。
この施設の管理を任されているのは、トウラ・ノ・ソウゴ中尉。
黒い髪を綺麗になでつけ、背が高く美麗な面貌の青年将校で、でもどことなく物腰が柔らかく軍服も粋に着崩している。ちょっと軽薄な感じもするけど仕事はできそうだ。
当然、特務機関の要員で名前からわかる通り生粋のまほらま人で貴族。つまりは支配階層なんだけど、つい最近大尉になった角付娘の私に対しても嫌みなく接してくれる。
荷物の整理のどさくさにまぎれ理由をそれとなく聞いてみると「あ、自分はそんな事拘らない性質なんで、アハハハ」
後々あの私をここまで連れれ来てくれたノワル曹長に聞いたところによると、中尉のお家は本領(本土)の南海州に結構な領地を持つ貴族だとの事。
「放蕩が過ぎて勘当同然で軍に放り込まれたそうなんですが、水が合って長居してるそうです。まぁ、特務機関ていうのはそんな変人の集まりであります」
ナルホドネ、お金持ちとか身分の高い人ほどそう言うこだわりは薄いのかもしれないわね。少将閣下みたいに。
だったらいろいろ聞いても構わないかと思い、夕食の時に中尉を捕まえ、来た時から気になっていたことを聞いてみた。
「食堂の飾りも綺麗だし、お部屋もまるで御殿みたいで立派だし、建物も大きい。ねぇ、ここは元々なんだったの?」
「
まさかそこまで見越してここを手に入れたとは思えないけど、倒産した
続いてもう一つの質問。
「ここにいる人は私と先生方二人、あとは貴方達が一個小隊で五十人ばかし、研究開発も警備もこの程度の人数で大丈夫なの?」
「機械を作る方は実際に試作機を作るような段階に成れば逐次職人が来る手筈です。あと警備の方ですがこれで十分。私の部下たちは一騎当千の強者ばかりですし、それにここの自然が施設を護ってくれます」
「どういう事?」
「この森にはサンチオオカミやシンリンクマ、それに体長四
煮込み料理のイモが変なところに入り咽そうになる。
気を取り直して最後の質問。
「ねぇ、私たちの作ったもので特務は何をしようとしているの?」
聞かれた中尉は、その子供みたいに綺麗な黒い瞳をパチクリさせたあと。苦笑いして。
「すみません、その後質問にはお答えしかねます。て、いうか、自分も知らないんです。おそらく私の上官、臨南支部長のインカシル中佐も知らなんじゃ無いですかね?詳細を知っているのは、あの怖いおネェ様だけでしょう」
と、どこか優雅な所作でお茶漬けをサラサラ。
そして空の茶碗を置いて。
「ま、特務機関なんて、往々にしてそんなもんですよ」
そう言い残しお盆を持って席を立って行った。
目的も解らず物を作る。難題だわこりゃ。
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