僕と彼女と

わて子

第1話

彼女の名前は未だ知らない。

ただ、彼女は綺麗でいつも穏やかだった。


僕には毎日近所の神社で必ず出会う女の子が居る

そもそもこの若さでどうして

わざわざ神社へ毎日出向くかというと

それは僕にもわからない。

ただ毎日の習慣といえばいいだろうか。


若い男がクリスマスといえば

彼女とデートしたり

友達とはしゃぐイメージだろう。


だけど僕にはそんなもの昔からない。


親はまともに学校に通わせたことなどない。

僕はずっと引きこもりだったからだ。


親とは毎日会話などしない。

共働きで忙しい両親からは

毎朝1万札がポンっと投げ捨てられたかのように

机の上に置かれている。


僕はそれを手に取り毎朝神社へ

何かの懺悔のように賽銭箱に投げつけた。


神社での謎の美少女との出会いはいささか

運命のように感じていた。

 

なんともない田舎町の小さな寂れた神社。


くるのは年に一回、お正月に近所の子連れや

じぃちゃんばぁちゃんがくるくらいだろう。


そんな場所へなぜ彼女は

毎日訪れているのだろう。


普段誰とも会話などない僕が到底

そんな美少女に話しかけられる訳もなく

ただなんとなくお互いが毎日この場所で

出会っているという認識程度だった。


彼女はいつも僕がくると

ニッコリと

美しい笑顔をみせ会釈をしてくれた。


陶器のような素肌。

長い黒髪。

どこか悲しげなその瞳。


まるでアニメの中から飛び出してきたような

彼女に僕は会釈をするだけで精一杯だった。


いつしか僕は神社へ行く理由ができていた。

ただ彼女に一目会いたい。

その為だけに雨の日も雪の日も僕は必ず

神社へ訪れる理由ができた。


彼女も何故か雨の日も雪の日も必ず

神社へきていた。


そんなある日

僕が神社へ行くと彼女が段ボールを抱えて

賽銭箱の前を行ったり来たりしていた。


なっなんだろう、、、内心いつもと様子が違う

明らかな後ろ姿に戸惑いながら

僕はいつもの様子を装いさりげなく

賽銭箱へと向かった。

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