第72話 ✳︎親友とお姉ちゃんに報告します。

「お邪魔しまーす」


「ななちんいらっしゃーい!」


「いらっしゃい」


「陽さんどうも」


「昨日ぶり、片桐さん」


「おー高山ぁ……なんだか、あかりんの家で高山見るの違和感あるな」


「それは私も一緒よ」


「陽さんやっぱりそう思いますよねー」


「俺も灯の家にいるのはまだ違和感あるよ」


「"まだ"ねぇ……まぁ、これから彼氏として何回も来ることになるもんね」


「お義姉ちゃん待ってるからねっ!!」


「お姉ちゃん余計なこと言わないで!!!」


 私はお姉ちゃんに少し強めに声を掛けると、お姉ちゃんは舌をチョロっと出しながらリビングへと逃げていく。


 くそ〜お姉ちゃんめー!!


「あかりん、今日の話ってどこでするの?」


「リビングだよ」


「なら、陽さんに着いていかないとね」


 私たちはそんなことを話しながら玄関から移動して、リビングへと入る。


 中ではお姉ちゃんがいそいそとお茶の準備をしていた。


 ぐぬぬ……さっきまではあんな感じだったのに、すっかりおもてなしモードに入っちゃってる。


 ずるいなぁお姉ちゃん。


「ほらほら、お茶の準備はできてるよー! 座って座って!!」


 私がちょっと悔しがっていると、お姉ちゃんがみんなに声を掛ける。


 それを聞いて私たちは椅子へと座った。


 私の横に座るのは泉だ。


 それを見てお姉ちゃんとななちんがニヤニヤ笑っているけど、私はそれに気づかないフリをした。


「それじゃあ人も揃ったし、今日集まってもらった理由を話します。……ま、なんの為に集まってもらったかはみんな知ってると思うけどね」


「え〜〜うち分かんなぁい。 陽さん分かりますぅ?」


「う〜ん。 私も分かんなぁい」


「……お姉ちゃんにはライブ遠征から帰ってきた夜に話したし、ななちんにも告白された日の夜に電話して、学校でも話したよね??」


「「え〜〜〜分かんなぁい」」


「お姉ちゃん!! ななちん〜〜!!」


「「うわーー!!灯(あかりん)が怒ったー!!」


「ア、アハハ……」


 私がうわーと2人に怒ると、隣で泉が頬をポリポリと掻きながら苦笑いを浮かべる。


 もうっ! 2人のせいで泉困ってるじゃん!!


「あはは、ごめんごめんって! もう揶揄うのやめるからさー」


「ごめん、調子に乗った」


 2人は手を合わせながら謝ってくる。


 それを見ると少し怒りは収まった。


「もう良いよ。 じゃあ、今日集まってもらった理由を話しするね」


 私は深呼吸をする。


 個別では話とは言え、やっぱり緊張するな。


「個別では話したけど、ちゃんと集まって話したかったから言うね。 私と泉は数日前のライブ遠征の日に、遂に恋人同士になりましたっ……!!!」


 私がそう言うと、2人は満面の笑みを浮かべて拍手をしてくれた。


 そして、ななちんは椅子から立つとぎゅっと私を抱きしめてくれた。


「聞いていたけど、本当に2人ともおめでとうっ!! うち、自分のことのように嬉しいよ!!」


「ありがとうね、ななちん!!」


「本当におめでとう灯、泉君。 泉君、男を見せたねぇ〜〜!!」


「あはは……ありがとうございます!!」


 泉がお姉ちゃんに褒められて少し照れ臭そうに笑う。


 そんな泉が可愛かった。


「いやー2人ともこれで晴れて恋人かー。 若い子は良いねぇ」


「お姉ちゃんなに年寄りくさいこと言ってんの?」


「陽さんだってまだ大学生で若いじゃん」


「ふっ……3人とも、私ぐらいの歳になると分かるよ。 大学生と高校生の違いってやつがさぁ……!!」


 お姉ちゃんが熱をこめながら言うので、思わず私たち高校生組は笑ってしまった。


 その笑いを見てお姉ちゃんが少し拗ねちゃったけど、みんなの顔には笑顔が浮かんでいた。


 紆余曲折あったけど、無事に泉と付き合うことができたし、色々心配をかけた2人には良い報告ができて良かったな。


 私は拗ねたお姉ちゃんを宥めながらそう思うのだった。

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