第49話 ✳︎カフェ

「お待たせー! ごめんね。 掃除時間長くなっちゃった」


「全然大丈夫。 むしろ、掃除当番お疲れー」


 ある日の放課後。 私達はライブ遠征の打ち合わせをする為に、学校の玄関で待ち合わせをしていた。


 周りを見ると、体操服姿の生徒が部室棟の方に向かっていたり、集団で自転車置き場に向かっている。


 こういう放課後の雰囲気が案外私は好きだ。


 なんか青春って感じがする。


 こうやって制服を着て誰かと帰るのは、人生でもう一年半ぐらいしか残されてないのかな?


 一応、大学には行きたい気持ちあるけど、大学って私服でみんなが同じ時間に授業が終わるってことはなかなかないから、こういう風景も見ることができなくなるはずだ。


 ……それは寂しいなぁ……。


「カフェで遠征について話すって言ってたけど、あそこのカフェでいいんだよね?」


 私が少し寂しい気持ちになって風景を眺めていると、靴を履き始めた泉が話し掛けてくる。


 いけないいけない。 なにノスタルジックに浸ってるんだ私。


 まだ一年以上もあるじゃん。


 今は泉とのほ、放課後デートを楽しまなきゃ!!


「そうそう。 私達の学校近くにあるカフェでいいよ」


 私は急いで靴を履き、泉の隣に並んで歩き始める。


 私達が通っている学校から徒歩5分ぐらいの場時に、うちの高校に通っている生徒が集まる、チェーン店のカフェがある。


 放課後になると駄弁っている生徒や、部活終わりの生徒がよく利用しているから、結構繁盛しているみたいだ。


 あのお店、当分潰れないだろうなぁ。


「いらっしゃいませー! 2名さまですか??」


「2名です」


「では、こちらの席にどうぞー!!」


 学校を出て歩き始めてから約5分。


 私達はカフェに入って、店員に案内されて席に座った。


 周りを見るとうちの生徒が結構いる。 女子で固まって雑談をしていたり、男子達が固まって1つのスマホを覗き込み、囲むようにしながらなんだか楽しそうにしている。


 あの男子達はなにをしてるんだろう?


 ソシャゲで良いキャラでも当たったのかな??


 ……はっ!? もしかして、なんかエッチなものを見ているのかも!?


 それなら、一つのスマホをみんなで覗き込んで、囲むようにしているのは理解ができる!!


「?? どうしたの灯? あの男子達が気になるの?」


 私が1人で考察して驚いていると、メニュー表を広げて見ていた泉が話し掛けてくる。


 私はへんな考察をしていることがバレたくなかったから、適当に理由をつけて泉に返事をした。


 泉は返事を聞いて納得した後、メニュー表を私に見せてくれる。


 う、うん。 あの男子達はきっとそんなことしてないよ。


 だって、公共の場だもん。


 きっとそういうのは、家に集まってするに違いない。 あ〜……私の馬鹿。 頭お花畑。


「私、紅茶とシナモンロールにしよ」


「じゃあ、俺はコーヒーにするわ」


 そう言って、泉は店員さんを呼ぶボタンを押して、注文をする。


 そして、私達は食べ物がきてから今日の本題を話し始めたのだった。


「灯は良いホテル見つかりそう?」


「うん。 とりあえず候補は3つ選んだよ。 泉の意見も欲しいな」


 私はスクショした画像を泉に見せる。


「おー3つも選んでくれたんだ。 大変だったでしょ。 ありがとう」


 泉は画像をスライドさせながら一つ一つしっかりと見ていく。


 私はその様子を見ながら、シナモンロールを食べた。


 うん。 甘くて美味しい!!


「俺、2つ目のホテルが1番良いと思うんだけど、灯的にはどうなん?」


「私的にはねーーーーーー」


 私達はカフェでのんびりしながら、ホテルや新幹線の料金などについて調べ、話し合う。


 私達の打ち合わせが終わる頃には、部活を終えた生徒達が徐々に入店し始めていた。


「そろそろ人も増えてきたし、今日はこの辺にしよっか」


「そうしよっか」


 私達は料金を払って店を出る。 外に出ると、茜色の空が徐々に暗くなってきているところだった。


「灯。 駅まで送るよ」


 泉が私の方を見ながら、優しく微笑む。


 その笑みを見て、私の心はポカポカと暖かくなった。


「ん。 じゃあ、お願い」


「はいよ」


 私達はゆっくりと歩き始める。


 こういう穏やかな雰囲気の中、放課後デートってのも、良いなぁ。


 そんなことを思いながら、私達は楽しく雑談をして帰路へとついたのだった。

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