第29話 ✳︎母と姉と会議。

「で、灯。 泉君とはどういう関係なのよ?」


「お母さんも気になるわ〜〜」


 泉が帰って数時間後、ダイニングでお母さんとお姉ちゃん、私の3人で夕ご飯を食べていた。


 お父さんはまだお仕事中。 休日なのにお疲れ様だ。 


「別にただの友達だよ」


「うっそ〜! あんたが男友達作っただけで驚きなのに、家まで連れてくるなんてただの友達なわけないじゃん!!」


 お姉ちゃんが箸をビシッと私に向けながら話す。 口の中に食べ物入ってるし、行儀悪いからそれやめて。


「陽の言う通りよ。 今まで連れてきたことなかったのに連れてきて、それがただの友達だなんて信じられないわ」


「お母さんの言う通りだよ!!」


 2人は気になって気になってしょうがないという感じだ。


 気になる気持ちは分かるけど、うざったいなぁ。


「本当にただの友達だよ。 好きな歌手が合うから仲良くなったの」


 私はモグモグご飯を食べながら話す。 これなら別に違和感はないはずだ。


「ふーん……もしかして、あんたが最近ハマってる歌手って、泉君の影響だったりする?」


 私は心臓がドキッとする。


 しかし、ポーカーフェイスを心掛けて話をした。


「別にそういうわけではないよ? ななちんの影響で好きになって、そこから泉もその歌手が好きだって分かって、仲良くなった感じ」


「はい。 それは嘘ね」


「な!? 何言ってるのお母さん!?」


「灯。 ポーカーフェイス心掛けているつもりかもしれないけど、バレすぎ。 表情とか声は普段通りだけど、食べ物掴む箸をブルブル振るわせて、さっきから刺身取れてない姿を見たら分かるに決まってるでしょ?」


 嘘っ!? そんなところに私、動揺があわられていたの!?


「灯……もうちょっと上手く隠せるようになると良いわね……」


「でも、そんな灯が可愛くて私は好きだよ……」


 お母さんとお姉ちゃんが温かい眼差しで私のことを見る。 


 ヤメロォ!! そんなダメな子ほど可愛いって言いたげな笑みを浮かべて、私を見ないでぇ!!


「じゃあ、灯にとって泉君は好きな人or気になっている人ってところか」


「あの灯に青春の風が吹こうとしているのね……お母さん、嬉しい!!」


「お母さん、ちょっと婆婆くさいよ」


「ア"ア"ン!? 陽何か言った??」


「あ、なんでもないです……はい」


 あーあ。 お姉ちゃん、お母さんの地雷踏んじゃった。


 いつもは優しいんだけど、年のことになると般若の様に怒るんだよな。


「ま、まぁ実際のところ、灯にとって泉君ってどういう人なのよ?」


 お姉ちゃんの質問で私は考える。


 好きな人……かはまだ分からない。


 でも、ななちんに負けてるって考えたら、モヤモヤが湧いた。


 ………………………………私にとって泉はーーーーーーーー


「まだはっきりとは分からないけど、気になっている人、なんだと思う……」


 私の言葉を聞いた2人は顔を見合わせる。


 少しするとキョトンとした顔は破顔して、楽しそうに笑っていた。


「そっかそっか」


「まぁ、焦らずじっくりね」


 お姉ちゃんは私の頭を撫で、お母さんはニコニコ嬉しそうに笑う。


 そんな2人と顔を見合わせるのが恥ずかしくて、私はそっぽを向いてしまった。


「さて、そんな灯は今日、泉君とどんなことをしたのかな?」


 お姉ちゃんが慈愛に満ちた表情で話しかけてきたので、私はそっぽを向きながら兄妹、姉妹あるあるを話したことを伝えた。


「そっかそっか。 他には?」


「…………以上だけど??」


 そう言った瞬間、温かった場は一気に冷め切った。


 優しく頭を撫でてくれていたお姉ちゃんの手に力が入る。 顔を動かすと、お母さんは無表情になっていた。


 な、なに!?


「気になってる人を家に呼んで、することがそれだけとか灯は馬鹿なんじゃないのぉぉぉぉぉ!?」


「い、いだい! お姉ちゃんいだい!」


 頭が軋むぅ! これ以上馬鹿になったらどうするの!!


「なんて……なんて残念な子なの……!! 手を握るとか、肩を寄せ合うとか色々あるじゃない……!!」


「そうだよ! お母さんの言う通りだよ! 色気なさすぎ!!」


「そ、そこまで言わなくていいじゃん!!」


「「これは言われても仕方がないことなの!!」」


 お母さんとお姉ちゃんは髪が震えるぐらい怒りながら、私に詰め寄る。


 結局、私はお母さんとお姉ちゃんにお叱り&アドバイスを貰い、解放されたのは食事が終わって1時間後だった。

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