第27話 妹と妹分とお買い物
「お兄ちゃんこれ持って」
「いずみんあれ買って」
「都のはまだしも、晴は自分でアイス買えよ」
「買って買って買って買って買って買って!」
「ええい!! 駄々をこねるなぁ!」
片桐さんの家で遊んだ次の日。
俺は都と晴に叩き起こされ、荷物持ちとしてショピングモールに連れてこられていた。
今はアイスクリーム屋さんの前で晴が駄々をこねている。
くそっ。 こいつタチが悪い。
側から見たら美少女が男の耳元で甘い言葉を囁いているように見えるけど、ただ高速でアイスを買えと催促しているだけだぞ。
だから、周りにいる男達はそんなに俺を睨むな。
そして、都はちゃっかり俺の腕や肩に荷物を持たせるな。
遂にお前、自分で1個も持たないようになりやがったな。
「都は自分で少しは持て! 晴は少し我慢しなさい! アイス買ってたら昼ご飯食べれなくなるだろうが!!」
「あ、バレた?」
「えぇーー! アイスは別腹だよ! 食べれるよ!」
「お前は昔そう言って食べれなくて、俺に押し付けてきたことがあっただろ!」
「あの頃とは違うんだよ!」
「駄目ったら駄目だ!」
「いずみんのけちんぼ!」
「なんとでも言えばいいわ!」
「…………相変わらず晴相手だとお兄ちゃん、お母さんみたいになるよね」
「俺はお母さんじゃない!」
「お母さんー! アイス買って!」
「それで本当にアイスを買ってもらえると思っているなら、お前の頭は幸せだなぁ!」
「いだだだだっ! 暴力反対!」
アイスを諦めていない晴の頭をグリグリする。
それを見て都はクスクスと笑っていた。
お前はそれでいいのか? 友達が兄に頭をグリグリされてるんだぞ? 止めなくていいのか?
「とりあえず、買い物一旦中断してお昼ご飯食べようか」
「別に俺はいいけどよぉ……晴はどうすんだ?」
「都が言うなら昼ご飯食べる」
「なんだこいつ……」
やっぱり中学校で1番晴がモテるとか嘘だろ。
確かに見た目は大人っぽいけど、中身は子どもだぞ。
都と中身と外側を入れ替えたら、お互い良い感じになるんじゃないか?
俺はそんなことを思いながら2人の後をついていく。
着いた場所はフードコート。
俺と都はハンバーガーセット、晴はうどんを買った。
「お兄ちゃん。 照り焼きバーガーも食べたいからちょっとちょうだい」
「ん」
俺が都の方にハンバーガーを差し出すと、都は小さな口をいっぱい開いて一口食べた。
「美味しいねぇ」
「もう一口食べるか?」
「いいの? なら、私もお返しでベーコンチーズバーガーあげる」
俺たちはお互いハンバーガーを交換して一口食べる。 うん。 美味いな。
「……なんだかずるいなぁ」
「?? なにが?」
「どうした?」
「いや、なんでもないよー! ただ、仲良しだなぁって思っただけ」
「そうかな?」
「これぐらい普通だろ」
俺と都は顔を見合わせる。 別にご飯をシェアするぐらい普通だろ。
「はぁ。 妬けちゃうよまったく」
そう言って晴はうどんを啜る。 とりあえず俺は照り焼きバーガーを差し出してみた。
「食べていいの?」
「別にいいぞ」
「なら、いただきまーす」
晴はガブっと一口食べる。
あっ! こいつ口大きく開いて一気に食べやがった!!
「お前、一口は一口だけどそれはないだろ」
「えへへ。 ごめんごめん。 美味しそうだったからおもわず……私のうどん食べていいから許してよ」
「まぁ、うどんくれるなら別にいいよ」
ハンバーガー食べる量は減っちゃったけど、うどんくれるなら問題はないな。
俺はうどんをもらおうとする。
すると、晴は箸でうどんを掬ってフーフーと息を吹きかけた後、俺に向かってアーンをしてきた。
…………それは流石に恥ずかしすぎる!!
「いや、普通に食べれるから!」
「遠慮しなくていいよ。 ほら、アーン♪」
「やめろぉ! 知り合いに見られたら俺は終わる!!」
「…………なんで私は親友とお兄ちゃんがイチャイチャしているところをこんな間近かで見せられてんの?? 意味わかんない」
俺たちがいる場所は混沌と化す。
ええい! 箸を奪って食べてやる!
「あっ!!」
俺は晴から箸を奪い取り、麺を啜る。
うん。 和風出汁が効いていて美味しい。
「あーあ。 食べられちゃった」
箸を返すと、晴はなぜか残念そうな顔を浮かべる。
いや、なんでだよ。
「間接キス、しちゃったね…………」
そう言うと、晴は残念そうな顔から一転して、ニコニコ笑いながら身体をクネクネと動かす。
それを見て、思わず俺ははぁ?と言ってしまった。
「いやいや。 反応が冷たすぎて思わず笑っちゃいそうになるんだけど」
「あんなこと言うからだよ」
「私自分で言うのもなんだけど美人だよ? そんな女の子に間接キスされたら嬉しいんじゃないの?」
「お前は妹分で、都と同じ枠に入るからなぁ」
「なら、私じゃなくて灯さんが同じことをしたらどうなるの?」
「ばっかお前。 恥ずかしくて顔を真っ赤にするに決まってんだろ」
「なんだか納得いかないんだけど!!!」
晴はフシャーと猫のように怒る。
でも、しょうがないじゃん。
晴は妹分。 灯は好きな人なんだから。
「そういや、奈々さんの家に灯と一緒に遊びに行ったって聞いたけど、楽しかった?」
「おう。 楽しかったぞ」
「えっ? いずみん奈々さん家行ったの? いいなー私も行ってみたい」
「私も行ってみたいなぁ。 お兄ちゃん。 奈々さんに聞いといてよ」
「お前ら片桐さんの連絡先知ってんじゃん……自分から連絡しなよ」
俺はため息を吐きながら2人に言う。
2人はそれもそっかっと言って、水を飲んだ。
「そういや俺、来週は灯の家で遊ぶ予定だから、今日みたいに俺を叩き起こすのはできないからな」
「えっ?」
「…………はぁ? それ、初耳なんだけど??」
「そりゃあ初めて言ったからな」
「えっ! えっ!? お兄ちゃん灯さんの家で遊ぶの!? えっ!? まじで!?」
「そのことちょっと詳しく教えてもらおうか!!」
都と晴はグイグイ俺に近づいて教えろと催促してくる。
俺は話せることが少ないので、正直に灯に遊びに誘われたことを話した。
「ほうほう。 これは面白い展開になってきた」
「別になってないだろ」
「灯さんは良い人だけど……いずみん、気をつけてね! なにがあるか分からないよ!」
「俺はダンジョンにでも行くのか??」
2人はそれぞれ変な反応をしていたけど、普通に遊びに行くだけだ。
……正直、好きな人の家で2人っきりで遊べることに下心がない訳ではない。
でも、ここでなにかをしでかすと関係が悪くなるような気がするから、きっと俺はなにもできないんだろうな。
「いやーこれは楽しみだなぁ」
「ぐぬぬ……気になる。 灯さんに聞いてみようかな」
「そんなこと聞くんじゃないよまったく……ほら、お前ら早く食器片付けるぞ。 人が増えてきた」
「「はーい」」
俺たちは食器を片付けて、またショッピングモールの中を歩き回る。
帰る頃には俺の腕には沢山の紙袋や箱があったのだった。
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