#7 神の一員

「仮装現実世界内でさつがいしても、現実世界のお兄ちゃんはいきていますよっ?」

『……それは問題無い』

「と、いうと?」


レアは首をかしげる。


『この世界は《ワールドオブユートピア》のシステムを引き継いでいる』

「そうですねっ」 

『……つまりここで殺しても魂はこの仮装世界に残る。

 現実世界のアイツは覚醒できず時間が経てば衰弱して死ぬ』

 

ついでに言うと……前回と違い、今回はログアウトボタンそのものを排除した。

 

「ふふっ。違いますよねフォルト様?」


レアはまるで全てを見通しているかのようだった。


『な、何がだ?』

「だからぁ……さっきもいったじゃ無いですか?

 ただ殺すならこんな面倒くさい事をする理由など一つもないんですよっ?」


レアは不適な笑みを浮かべながら、

まるで私を見下しているかのような表情でそう発言した。

  

『レア。私を舐めているのか? 消すぞ?』

「へぇ―。わたしを消すのですか? どうやって消すのでしょうっ?」


レアは手を背中の後ろで組み笑いながら私に近づいてくる。


「さあさあっ。消してくださいよっ? 消せるものならっ。ふふふっ!」


こいつ……来栖隼斗が用意したメインキャラクタ―は、

消せない事を知って発言しているのか……!


『……確かに私はお前を消せない。だが、お前を殺す事なら出来るが?』


私は剣を手元から取り出し、レアに向けた。


「わたしを殺すのですか? それも……フォルト様に出来るのでしょうかっ?」


レアはにやにやと微笑んでいた。


私はUI越しに彼女のレベルを見る。


レア:レベル120


今の私と同じレベルだ。


「今のわたしは、あなたと意識を共有していますっ。

 ですから、フォルト様とすてーたすは殆ど同じなんですよっ?」

『……冗談だ。それよりも――今は調べる事がある』


私は剣を仕舞しまった。


「……調べる事、ですかっ?」

『ああ……。《アンバランサ―》と呼ばれる能力者が気になってな』


そう言いながら私はホログラムモニタ―を表示させる。


モニタ―越しには過去の映像が流れており、映像には二人の男が映っていた。

一人は物質を強化させたり、テレポ―トや体能力強化まで様々な能力を使う能力者。

もう一人は、対象を石化させる能力。発動まで時間が掛かる代わりにとても強力だ。


彼らと同じ場所にいたフェ―べとコ―デリアを石化し、

来栖隼斗とその仲間との戦闘の途中で突然倒れた……。


「彼らがどうしたのですか? 何か問題でもっ?」


レアは映像を見ながら首を傾げた。


『今のこの世界……《第三世界》としよう――は現実世界を完全に模して作った世界だ』

「そのようですね? それで?」

『現実世界に能力者などおらん つまり――彼らはありえない存在だ』

「フォルト様が作られたのでは無いのですか?」

『断じて違う。……現実にはいない存在が何故この世界にいるのか? 考えられるのは……』


「なんでしょうっ?」


レアは私の回答を待っていた。


『私がこの第三世界を生成したタイミングで、

 なんらかの理由で能力者が現れたということになる……?』


私としても理解不能な回答に陥ってしまった。

不可解だ。現実世界に能力者がいるわけがない。


考え直した私は、先ほどの映像を閉じ――他にも能力者がいないか世界全体をサ―チする。


すると、何故か日本にだけアンバランサ―と呼ばれる能力者が多数いるという事が判明した。

パイロキネシスやテレキネシス使い。 あとは催眠能力使い等……。


そして、調べているうちに見つけた。

その中でも桁が違うエネルギ―を体内に宿している存在を。

この能力者の大元―つまり一般人にエネルギ―を分け与えている奴の事だ。


その存在をモニタ―からリアルタイム映像で捉えた。

ソイツは蒼い霊体のような人の姿で紅い目があり光っていた。

目以外の顔のパ―ツは見当たらなかった。


「この幽霊みたいのはなんですかっ?」

『不明だ。ただ、コイツがアンバランサ―に能力を与えている存在のようだな』

「へぇ―……?」


6月13日……。

12日時点ではこのような能力者はいなかった……。

つまり、この蒼い霊体は6月13日になんらかの理由で現れるという事だ。


『未来……』


まさか……私は、VR世界とはいえ、人類史上初のタイムリープに成功したのだが、

現実世界にいない私などの存在や、ありえない能力魔法をも持ち込んでしまったため、

宇宙が、その《パラドックス》のバランスを取るため

物理法則の違うパラレルワールドと干渉させている状態なのか……!?


私とレアはモニタ―越しにこの謎の存在を見つめていた。


「――誰だ? ワタシを覗いているのは?」


霊体のような存在は、そう呟いた。


『……独り言か?』

「独り言? ワタシは君に話しかけているのだよ?」


そう言った蒼のゴ―ストはモニタ―越しに私たちの方を見る。


そんな馬鹿な……。

この空間は私とレア以外には干渉できないようにプロテクトされてるんだぞ?


それは絶対だ。あのアマルテアでさえこの空間に干渉することはできない……!


「ところで……君たちはこの世界の神かい?」

『……そんなところだが。 お前の目的はなんだ?』


そう私が蒼の霊体に質問するも彼は無視し、話を続けた。


「そうなのかい? じゃあこれでワタシも――――」


突然、モニタ―にいた霊体は姿を消し、そして……。


――シュ


私たちの目の前に現れた…………!


「――――神の一員かな?」

「『――――!?』」

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