オリバー先生

厩舎に着くと、馬装を終えたティラノ号とソフィアと、オリバー先生の姿があった。

オリバー先生の肩には、ヨボヨボの年老いた白い鳩が乗っている。


「オリバー先生!?なんでここに?そして、その鳩は、もしや使獣ですか?オリバー先生の使獣は、もう亡くなったと聞いてましたが!?」


後遺症で無表情のオリバー先生に、ミカが語りかけるのを、ソフィアが遮った。


「ミカエル様!お待ちしてました!時間が無いです!詳しい話は後です!とにかく、オリバー先生から力を借りてください!」


「ええ!オリバー先生に!?いいんですか?」


オリバー先生の無表情の顔が、心なしか綻んだように見えた。オリバー先生は、ミカの手をとりながら、優しい声で語りかけてくれた。


「事情はソフィアくんから聞いているよ。あの聡明なクロード王子を死なすのは惜しい。君なら助け出してくれると信じてるよ、ミカエルくん。·····実は、使獣の鳩は死んだフリをしていたんだ·····どの道あのまま王宮にいたら、イーサン王に力を使われすぎて、使獣は死んでいただろうからな。·····もう残り少ない使獣の力を、未来ある若者を助けるために使えるなら本望だよ·····我、この者に使獣の力を渡す·····鳩の力は、人の言葉を伝える力だ。既に、ある者達から言葉を預かって、込めてあるから安心せい。力を使う時は『オリバー・ダブの使獣よ我に力を』と唱えるのだ。」


「ある者達からの言葉って·····?」


ミカの質問を遮り、ソフィアがミカの背を押した。


「ミカエル様!本当に時間が無いんです!話は後です!ティラノ号に乗って下さい!とにかく今は、海の民の城に向かってティラノ号で駆けて下さい!城が見えてきたら、まずご自身の使獣の力を、次にフィン、アメリア、イザベラ、キース、ナンシー、ジュリアの順に力をお使いください。そして最後に困った時に、オリバー先生の力を使ってください。そうすれば、時間さえ間に合えば、ミカエル様もクロード様も生きて帰れます!間に合うかギリギリのタイミングです、急いで行ってください!」


ソフィアのあまりの切迫感に、ミカは頷いた。


「オリバー先生ありがとうございました!そして、ソフィア、本当に色々ありがとう!必ず生きて帰るよ!·····行こう、ティラノ号!」


ミカはひらりとティラノ号に跨り、東へ向かい夜道を駆けて行った。

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