お部屋訪問

ミカは部屋に戻るなり、いそいそと部屋の片付けをはじめた。

ダルが不思議そうに、ミカに聞いた。


「なんでこんな時間に大掃除を始めたんだウサ?パジャマにも着替えないし、寝ないウサか?」


「あ、ああ。ちょっと来客の予定があって·····ダルは先に寝てていいよ。」


ちょうどその時、部屋がノックされてクロードの声が聞こえた。


「ミカ?遅い時間にすまない。少しだけ話していいか?」


「クロード!今開けるね!」


ミカが扉を開けると、申し訳なさそうにクロードが立っていた。


「少しだけ、話したいことがあるんだが·····」


「うん。いいよ。どうぞ、部屋に入って?そこの椅子に座ってね。何か飲む?」


クロードは部屋に入ると、落ち着かなさそうにウロウロして、ベッドにいるダルを撫でたりしてから、椅子に座った。


「いや、すぐ部屋を出るから飲み物はいい。ありがとう。·····実はダンスの練習の件なんだが、あれを明日の夜にでも、ミカに頼めないか?」


「あ!そういうことか!いいよー!そうそう。私も男性パート教えてほしかったから、ちょうどいいや。·····そうなると、恐怖症克服のためには、私はジュリアっぽい格好した方がいいよなぁ。残念ながらドレスは持ってないから、どうしようか。」


「ドレスは私が、手配しておくから大丈夫だ。」


そう言うなりクロードは、急に椅子の上で体育座りをして縮こまった。そして、足に顔をうずめながら続けて言った。


「良かった·····今日、ミカがまったく視線を合わせてくれないから、強引に迫ったせいで嫌われたのかと思ってた。·····普通に話せて良かった·····。」


椅子の上で小さくなってるクロードの弱気な発言に、ミカは抱きしめたい衝動にかられた。クロードを不安にさせてしまうなら、いっそ思いを告げようとミカは言葉をふりしぼった。


「そんな·····嫌うなんて絶対にないよ·····む、むしろ·····あの·····その·····」


もごもご言うミカの言葉が聞こえていなかったのか、クロードはパッと身を起こし明るい表情でミカの言葉を遮った。


「嫌われてないのなら、良かった。では夜分に長居しては悪かった。これで失礼する。明日の夜のための、教室の使用許可は私が先生に貰っておこう。それでは、夜分に邪魔してすまなかった。」


クロードは早口でそう言うと、さっさと部屋を出て行ってしまった。


ダルが呆れた表情で言った。


「クロードは時々空気読めないウサな。ミカも勿体ぶらずにさっさと言うウサ。ふぁー。もう夜も遅いから僕は寝るウサ。」


(うぅ、自分の恋愛スキルの無さが恥ずかしい·····。たぶん小学生以下のレベルなのではないかな·····。)


ミカは、ほてった顔に手をあてて、大きな溜息をついたのだった。

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