「やり直しなんていらねえんだよ!」とパーティを追放されたけど、もうセーブもロードもないんだよ? ~崩壊したってもう遅い。俺を拾ってくれた美少女パーティと宿屋にいく~
35話 ホワイトアリスは英雄になりました
35話 ホワイトアリスは英雄になりました
「くそ、撤退だ」
フードを被った男がそう言って透明ドリンクを飲もうとする。
だがリアが床を蹴って素早く移動しそれを制止する。
「く、くそ離せ」
「殺されたくなければ首謀者を教えろ」
「誰が教えるものか」
「じゃあ死ぬか?」
俺がリアが組み伏せたフードの男のフードを取る。
そして眼前にヴィクトリカから借りた剣を突き付けた。
「ひ、ひいっ。わ、分かった。い、言う。だから、ゆ、許してくれ」
「名前は?」
「市民街の冒険者ダックだ」
「特徴は?」
「黒髪で太った奴だ。眼鏡をかけている」
俺は腹部を殴り気絶させる。
「警備部隊はこいつの確保と、ダックという人物を出国させるな」
異変を察知し急いで駆けつけてきた宰相ルーティア率いる警備部隊。
その警備部隊の一部が俺が気絶させた男を捕縛する。
残りはすぐにダック捜索へ向かう。
「セーブ」
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スロット1 王族城寝室
スロット2 王族城寝室
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俺はスロット2に上書きセーブをした。
「リア、ヴィクトリカ、ラフレア、アリス。急ぐぞ」
「はい」
「うむ」
「ええ」
「はい」
俺達は急いでダックという人物捕獲へ向けて市民街へ移動する。
国王陛下は腰を抜かして醜く地べたに座り込んでいた。
呆れた様子でルーティアが見ていた。
市民街に辿り着いた俺達はアリスの力を借りる。
「マジックセンサー」
「どうだアリス、同じ魔力を感じるか?」
「あの者の残り香と同じ魔力が冒険者ギルドの中から感じます」
「ナイス。行くぞ」
「はい」
俺達は急いで冒険者ギルドへと向かう。
そして同時にダックと思わしき人物が急いで逃げようと冒険者ギルドの外へ出てきた。
「おいどこに逃げる気だ? 逃がさねえぞ」
「くそ、あの無能失敗しやがって」
「お前がダックだな。悪いが捕縛させてもらう」
「あんな無能の国王を庇う気か。殺された方が国の為だ」
「正論だ。そして同感だ」
「じゃあ何故だ!?」
「クエスト報酬が美味しいからだよ」
俺の言葉と同時にリアとヴィクトリカが鋼の剣を手にして地面を蹴ってダックへと向かう。
ダックは太っていて鉄の鎧を着ている。
眼鏡をかけたぽっちゃりだ。
「甘いな」
「何!?」
ダックは透明ドリンクを急いで飲んで三十秒間透明になる。
リアとヴィクトリカの攻撃がすり抜けた。
「逃げる気よ。どうするの」
透明ドリンクを何本持っているか分からないな。
沢山持ってたら厄介だ。
さてどうするか?
一度ロードするか。
そう思った時、アリスが言葉を口にした。
「私に任せてください」
「何か考えがあるのか?」
「はい。このカースケインを使えば」
「分かった頼む」
そう言ってアリスはカースケインを両手で横にして持ち詠唱した。
「呪術カースアビス」
そう詠唱した瞬間カースケインが禍々しく光だし、周囲を黒き闇で覆った。
すると突如ダックが苦しそうにして姿を現す。
何が起こったんだ!?
「このカースケインの能力です。一度認識した敵意のある対象を呪う事が出来ます」
「呪う?」
「はい。呪いの効果はこうです」
アリスが呪いについて解説する。
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呪術カースアビス
能力 一度認識した敵意のある対象を一定時間呪う。
呪われた対象は一定時間呼吸が苦しくなり動けなくなる。
持続時間 三十秒
魔力消費量は激しい。
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何ていう恐ろしい能力。
これは凄い能力だな。
これを使いこなすアリスは天才かもしれない。
俺は呪いを受けて苦しそうなダックを殴り気絶させる。
これにて国王陛下暗殺計画は無事に阻止できた。
警備部隊が直ぐに駆けつけダックを捕縛する。
首謀者だから罪は重いだろう。
処刑かもしれないな。
そして現在――
「私は認めぬぞ。Cランクパーティー如きに救われたなど」
「そんな文句はいいからさっさと報酬を寄越せ」
「誰に物を言っている。私は国王だぞ。報酬などやらん」
「は!? お前何言ってやがる。殺されたいのか」
「うるさいうるさい」
プライドが凄く高い国王陛下はどうやらCランクパーティーに救われた事に納得がいかないようだ。
子供のように駄々をこねている。
俺は内心どころか苛立ちを顔に出していた。
すると国王の間に宰相ルーティアが足を運ぶ。
「失礼ながらホワイトアリス様のお陰で貴方の命は救われました。これは事実です」
「事実ではない。こんな奴らいなくても私は自身で対処できたわ」
「事実なのでランシード国民全員にこの事を公表しました」
「は!? 貴様何を勝手に!!」
「ついでに私も辞職します。もう我儘でクズな貴方には付き合っていられません」
「ま、待て。お前がいなくなったらこの国はどうする」
「ご立派な国王様なら何とかできるでしょう。大丈夫だと私は信じています」
そう凄い皮肉を言って満面な笑顔で笑って退出するルーティア。
俺達は全員内心ざまぁと思った。
そしてルーティアの後に続いて退出する。
「冒険者ギルドに報酬は渡してありますので、金貨二十枚はそちらでお受け取りください。国王の懐から抜いておきました」
「ナイスだ。いやあスッキリしたな」
「はい。これで私も自由の身」
「これからどうするんだ?」
「暫くは色々な国を周って旅をしたいと思います」
「そうか。また会えるといいな」
「はい。本当に今回の件ありがとうございました」
そう言ってルーティアは俺達の前から消えた。
その後国王陛下の醜態は全国民に晒された。
ガクガクブルブル震えていた事実やCランクパーティーの俺達に縋りついた事など。
国王は屈辱を受けることになった。
赤っ恥をかいた国王は意気消沈して引きこもるようになった。
国を実質指揮するのは帰国した息子であった。
そして俺達は何故かランシード国の英雄となった。
あれ? 何で俺達英雄扱いなんだ。
どうやら差別を助長していた国王陛下を退位させた功績が国民に認められたようだ。
貧民街は撤廃され貧民街の民は市民街に移動する事になった。
「凄いじゃねえか。お前ら国の英雄だぞ」
「本当に凄いわね。さあさあ今夜はパーティーよ」
「イヤッホー」
何故か俺の周囲が盛り上がっている。
「これで良かったのか?」
「まあいいであろう。妾達はクエストを成し遂げたのじゃ」
「まあそうだが」
「今夜は食べまくるのじゃー」
「おい、待て」
この日【ホワイトアリス】はこの国の英雄となった。
貴族連中ですら前国王陛下の事は嫌いであった為、ホワイトアリスを称賛した。
「よかったですね。一件落着で」
「そうだな。アリスのお陰だよ」
「そんな事ないですよ」
「いや凄かったぞアリス」
俺はアリスの頭をポンと撫でた。
アリスは嬉しそうにしていた。
さあセーブしよう。
「セーブ」
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スロット1 王族城寝室
スロット2 ランシード王国冒険者ギルド
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俺はスロット2に上書きセーブをした。
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