21話 デビルメイデン貴族からの信頼をなくす

 魔獣ブラックウルフ討伐の為バレッド達は直々に依頼されたガレイル卿と会っていた。


 

 「最近この国の近くで魔獣ブラックウルフが出現していて国民は困っているんだ。是非討伐をお願いしたい」

 「有難くその言葉拝命いたします」

 「うん。まあ君たちSランクパーティーデビルメイデンなら余裕だと思っている。頑張ってくれ」

 「はっ」



 ガレイル卿。


 地位は子爵。


 豪華なスーツに身を包んだ上品な人物。


 銀色の髪が特徴の貴族だ。



 「よし行くぞお前たち」

 


 バレッドがやる気を漲らして言った。


 【デビルメイデン】の皆がそれに同調した。



 【デビルメイデン】の連中が滞在している場所はレーステア王国。


 人口数十万人規模の国である。


 貧民街から貴族街まで存在する。



 バレッド達はここで貴族に恩を売っておけばと考えている。


 いずれ俺達も貴族の地位を手にできると。


 バレット達は内心笑いが止まらなかった。



 「確かここら辺でブラックウルフの目撃情報があったんだよな」

 「そうらしいわよ」

 「まあ余裕な相手だ。ちゃっちゃと終わらせようぜ」

 「ええそうね。早くシャワーを浴びたいわ」

 「おっ、俺と浴びてえのか」

 「違うわよ」

 「冗談だ。はははっ」



 バレッド達は余裕をこいて国の周囲で雑談している。


 日が暮れた頃、一匹の魔獣の気配が現れた。



 「何かいます」

 「遂に来やがったか」

 


 魔獣ブラックウルフが闇夜の中整備された道を駆け巡る。


 バレット達は闇夜のせいで獲物を追えなかった。



 「くそどこにいやがる」

 「これではまるで見えないね」



 バレッドとヴランが困惑している。


 その瞬間ヒーラーであるイルーンにブラックウルフが嚙みついた。



 「きゃああああああああああ」

 「どうしたイルーン!?」

 「噛まれたわ」



 イルーンは腕を噛まれた。


 幸い命に別状はなかったがこんな経験初めてだった。


 ローマルがすぐに手当てをする。


 ラークを追放した今、パーティーで唯一のヒーラーは重要なのだ。



 「くそちょこまかと。舐めやがって」



 バレッドが魔獣ブラックウルフをようやく闇夜に慣れた目で捉える。


 そして剣を振り下ろした。


 だが魔獣ブラックウルフはそれを素早い動作で回避する。



 「くそ。一旦引くぞ」

 「ええ」



 闇夜では敵わないと判断したバレッド達は一旦イルーンの治療の為撤退する。


 そしてバレッド達は初めてAランクモンスターブラックウルフに苦戦した。



 「おい新人。何してやがる」

 「す、すみません。でも闇夜の中じゃ目が慣れるまで時間がかかって」

 「ちっ。次はしっかりやれよ」

 「は、はい」



 バレッドは怒鳴り散らす。


 そして同時に脳裏にラークの存在が一瞬頭をよぎる。


 無能だと追放した筈のラークの存在を。


 あいつならやり直せたしセーブも出来たと。


 だがバレッドは苦悶の表情ですぐにその脳裏に浮かんだラークの存在を振り払った。



 翌日の朝――



 「クエストは失敗と言う事だね。非常に残念だ。君たちには失望したよ」

 「ま、待ってください。もう一回だけチャンスを」

 「昨日君たちが撤退したお陰で国に被害が出た。残念だが別のパーティーに頼んでいる」

 「つっ」



 バレッド達はクエストを失敗した。


 貴族の地位を得るどころか、貴族からの信頼を落とし失った。


 

 「くそがああああああああああああああ」



 バレッドは酒場でワイングラスを床に叩きつけた。


 怒りが収まらなかった。



 「つ、次は大丈夫ですよ」

 「言われなくても分かってるわ」

 「ひぃぃ」

 「次無能を晒したらラークと同じように追放するからな」 

 「が、頑張ります」



 ラークがいなくなってからのこの数日の【デビルメイデン】は酷い有様だった。


 ラークという存在の大きさを徐々にこれから痛感していく事となる。


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