18話 商人が何かを隠しています
アーレイで鉄の剣を購入したり雑貨を購入したりして色々出立する準備を整えた。
向かうはエルン。
確か俺も行ったことないな。
「じゃあ行くか」
「ええ」
「うむ」
「はーい」
「はい」
俺達はアーレイ冒険者ギルド支部から十分な実力があるパーティーと認められた。
これによりアーレイではなく別な冒険者ギルド支部でクエストを受注することになった。
「ところで冒険者ギルドでの記録は全て本部が保管しているのよね。私達のアーレイでの実績も本部に?」
「残ってるよ。本部側が記録を見てランクを昇格させるかどうか決めるんだ」
「じゃあ一歩ずつBランク昇格に近づいているって事ね」
「ああそうなるな。エルンでクエスト達成すればもしかしたら昇格するかもな」
「何か体がうずうずしてきたわ」
「気が早いぞ」
「分かってるわよ」
俺達はエルンに向かうため整備された道を歩いていた。
北に十五キロほど先だったよな。
今日中には余裕で着くな。
「それにしても暑いのう」
「ああ日光がきついな」
「喉が渇いたのう」
「ほら水」
「すまぬ」
俺達は雑貨屋で水を持てるだけ購入した。
昨日から天候が急に変わり太陽の日差しが出ている。
黒いコートに身を包んでいる俺達は余計に日光を吸収してしまう。
「ぷはあっ。死ぬところであった」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃ。それにしても十五キロが果てしなく遠く思えるぞ」
「同感だ」
決して遠いわけではないが近くもない。
ああ馬車が欲しい。
そんな事を思いながら道を歩いていると、向こう側から荷馬車を引いた商人と思える人物がやってくる。
「何か買いたいんだが」
「い、いえ。な、何も、う、売れるも、物はあ、ありませんので」
「何で動揺してる。ただ聞いただけだろ」
「別に、ど、動揺なんてしていません。では私はこれで」
この商人何か隠しているな?
確かめてやるか。
「セーブ」
俺はセーブした。
そして商人に鎌をかける。
「そう言えば最近怪しい代物を売っている商人がいると聞いたな。確か――」
「ち、違う。私はただ見てしまった。はっ」
「何を見たんだ?」
「鎌をかけましたね」
「別に。ただそういう噂を聞いたとか聞いてないとか」
「何か売りますか?」
「隠している情報を売ってくれ」
「口外すれば私は殺されます」
「じゃあ怪しい商人がいるって言いふらすからな」
俺の言葉に慌てた商人がキョロキョロと周囲を見渡して俺達に近づく。
そしてコッソリと伝える。
「絶対に口外しないでくださいよ。エルンという町で殺人鬼を雇っている貴族がいるらしいのです。偶然聞いてしまって」
「殺人鬼を雇う? 何のために」
「詳しくは知りませんが噂だと人間の指を集めている変人だとか」
俺達はその話を聞いて顔を見合わせた。
まさかあのアーレンにいた殺人鬼って貴族に雇われた人物。
そう言えばあの方とかコレクションがとか言ってたな。
合点が言った。
しかしエルンという町に貴族が住んでいるのか。
意外と面倒だな。
貴族は傲慢な奴が多くいけ好かない。
「偶然話を聞いてしまったから逃げるようにエルンを出立したのか」
「そうです。貴族と雇われであろう殺人鬼の現場に偶然出くわしたんです。奇跡的に見つからず」
「口外しないでやるよ。お礼に何か買ってやる」
「一番おすすめはクーラードリンクですかね」
「体が冷える奴か。それを五人分くれ」
「銀貨2枚でいいです。毎度ありがとうございます。絶対に口外しないでくださいね」
「分かってる」
商人からクーラードリンクを購入した。
それと同時に商人は急ぎ足でエルンから遠ざかっていく。
「エルンにも殺人鬼がいるんですかね?」
「多分いるな。こまめにセーブする。全員油断しないようにして固まって動こう」
「そうですね。一人になるのは危険ですしね」
「ああ。取り敢えずセーブ」
俺はここでセーブをした。
そして購入したクーラードリンクを飲む。
一気に体が冷える。
「涼しいわね。体の芯が冷えるような」
「持続効果は一時間ぐらいだろうからなるべく日が暮れる前にエルンに急ごう」
「そうね。殺人鬼の件もあるしね」
俺達は整備された道を北に十五キロ程進んだ。
そしてエルンが見えてきた。
アーレイよりは少しだけ大きな町だ。
だが不穏な空気が漂っている。
どうやら町民の誰かが殺人鬼の餌食になったようだ。
「取り敢えず宿を取ろう」
「はい」
俺達はエルンに入町するのと同時に直ぐに宿を取った。
そんなにお金に余裕が無いので一部屋だけ借りた。
アーレイの宿よりは一部屋でも大きかった。
「冒険者ギルドに行くか」
「そうですね。先ずはクエスト受注が最優先ですしね」
「殺人鬼や貴族には出来れば関わりたくないからな」
「そうですね。成るべくトラブルは避けたいです」
俺達はエルンの冒険者ギルドに向かった。
そこで思わぬトラブルに出くわすことになる。
全く面倒だ。
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