第43話 反抗期!?☆教育的指導は計画的に ※下ネタ多め


「女装を強要って……。それはもう、責任の一端がある以前に、完全にキューブロ殿のせいではござらんか?」


「いや、でもね、ひろみの顔って昔から中性的……じゃなくて、完全に女の子顔だったんだよね。近所の人とか、親戚とか、みんなひろみの事は〝ちゃん〟付けで呼んでたし、まつ毛も長いし、肌も白いし、タヌキ顔だし、身長も高くないし、男みたいに顔や体の線がカクカクしてないし……」


「うむぅ……。たしかにそう言われてみれば、いや、言われなくても、女子オナゴにしか見えませぬな……ていうか、心臓破坂にもここまで可愛い女子はいないのでは……?」


「でしょ?」


「うむ。やはり化粧抜きにしても、女子にしか見えませぬ。体型然り、表情然り」


「ほら、ひろみ。よかったね。心臓破坂のクリスティがひろみの事、褒めてるよ」


「え、あ、う、うん……なんか、ァザス……」



 ひろみもまんざらでもないのか、跪いたまま、耳まで真っ赤にしている。我が弟ながら、わかりやすいな。ていうか、いつまでその体勢なんだ、この子は。



「それにしても、見れば見るほど、オノコには見えませぬな。……失礼でござるが、本当にチ〇ポついている・・・・・のでござる?」


「……は……はあっ?! あんた、何言って……?」


「確かめてみる?」


「ブッ──!? ちょ、は、はあ!? アホか! なに弟の股間を他人に触らせようとしてん……ですか」


「他人じゃないよ。霧須手さんは同僚です」


「こ、言葉遊びをしてる場合じゃね……な、ないんですよ? つか、あんたもなんか、ござるござる言ってて普段とキャラ違うけど、アイドルなんだよな? アイドルがチ〇ポなんて口にしてんじゃねえよ!」


「デュフフ……アイドルも人間にござる。異性の体に、とりわけ男の娘のイチモツ興味を持つのは当然でござろう」


「ちょ、マジ頭おかしいって、このアイドル! さっきからハァハァ言ってるし……ね、姉ちゃん、冗談だよな!? これ、本気じゃないんだよな!?」


「冗談? まさか。本気に決まってるでしょ」


「つ、付き合ってらんねー!」



 ひろみはそう言うと、ガバッと勢いよく立ち上がった。



「ちょっとひろみ、前隠しなって。胸見えてるから」


「うるせー! 男は胸なんて隠さねえよ!」


「そんな事を気にする男は、ヒラヒラなんて着ないと思うけど……」


「いや、これヒラヒラじゃなくて、どう見てもフリフリだろうが!」


「……あんたもクロマさんと同類か」


「つか、俺もう帰っから! これ以上ここに居ると、アホが感染うつる」


「デュフフ、今夜は帰さないでござるよ?」


「ひぃ!? なんなんだ、こいつ!?」


「そういえばひろみ、あんたこんなところで何してんの? インベーダー倒したの、たぶんあんたなんでしょ?」


「せ、宣戦布告だよ!」


「誰に?」


俺たち・・・が、あんたらS.A.M.T.に取って代わって、魔法少女ビジネスを一手に引き受けるんだ! 前時代の遺物のおまえらはもう用無しって事だ──あいて!?」



 コツン。

 私はひろみの頭を軽く拳骨で叩いた。



「こらひろみ! 誰に向かって口利いてんの!?」


「え、いや、どうせ今もそのインカムで聞いてるんだろうし、責任者に向かってだけど……俺もべつに姉ちゃんに言ったわけじゃ……」


「謝んなさい」


「え?」


「あんたらの組織がどんな組織か知らないけど、一団体が、無許可で、国がやってることに首突っ込んだり、妨害したり、乗っ取ったりするのは、犯罪なんだからね? それに、こっちはみんな迷惑してるし……仮にもし、S.A.M.T.が営業できなくなったら、誰が職員さんたちを食べさせていくの!?」


「ええっと……」


「それとも、食いっぱぐれてもいいって言ってるの!? 私たち勿論だけど、あの人には、あの人達の生活があるの。このご時世だし、みんな苦労してるんだから、面白半分で宣戦布告なんて大それたこと止めなさい! お姉ちゃん、ひろみをそんな子に育てた覚えないよね? ねえ?」


「そ、それは……」


「謝んな。いまならお姉ちゃんも一緒に頭下げてあげるから。それに、お姉ちゃんも魔法少女だから、ある程度は口も利いてもらえると思うから。……ね? 謝ろうよ、ひろみ。それで、どうしても続けたいんなら、こっちで一緒に魔法少女やろう?」


「ね、姉ちゃん……」



 ひろみは唇をきゅっと噛むと、そのまま俯いてしまった。

 まだまだこの子も思春期真っ盛り。

 何が良い事で、何が悪い事かなんて、本人にはわからない。判断がつかない。

 本当に悪いのは、おそらく、ひろみの背後で、ひろみを利用しているダメな大人だ。見つけ出して、必ず落とし前はつけさせなくては……!



「──い、いやだ!」


「あン?」


「お、俺、もう姉ちゃんの言いなりにはならないから! 女装も止めないし、魔法少女も、辞めない!」


「……あのねひろみ。べつにお姉ちゃんも止めろって言ってるわけじゃなくて……」


「それに、俺のほうが姉ちゃんよりも可愛いし! 何より若い!」


「ンだとォ……テメェ!?」


「だ、だから! もう怖くねえんだよ!」


「……その割に、足ガクガクでござるが?」


「うるせえ! この変態アイドル! これは武者震いだ!」


「デュフ、拙者が変態アイドル……? わ、悪くない……むしろヨシ!」


「いいか、S.A.M.T.……いや、キューティブロッサム! 俺は必ずあんたを倒して、俺たちの組織、魔法少女派遣会社、略して〝魔遣社〟を業界トップへと押し上げる! それを邪魔するなら、たとえ姉ちゃんでも、ぶぶぶ……ぶっ飛ばすからな!」


「言いたい事はそれだけか?」


「え?」


「言いたい事は! それだけかっつッてンだよ!」


「ひ、ひぇ……こ、こわひぃ~!」



 ──ボフン!

 私がひろみに飛び掛かろうとすると、ひろみは持っていた何か・・を地面に叩きつけた。その何かは地面に当り、炸裂すると、周囲に白い粉のようなものを撒き散らした。



「け、けむり玉……!? 何と味な真似を……! しかし、これでは何も見えぬでござる!」



 私も目を閉じて、ひろみの気配を探ってみるが、もうすでに、周囲にはひろみの気配はなかった。私は霧須手さんの能力を吹き飛ばした時みたいに、また腕を思い切り振るうと、視界の粉を全て吹き飛ばした。



「おお……! さすがはキューブロ殿……! しかし、この短時間で姿をくらますとは……ひろみ殿もなかなかの使い手とお見受けした」


「そう……みたいだね」



 でも、何でこんな事に……。

 あんなに優しくて、気弱だったひろみが……。



『──大変なことになってしまったきゃとね……』



 突然、耳元にクロマさんの声が聞こえてくる。



「クロマさん、これ、どういう事ですか?」


『……とりあえず、帰ったら緊急会議きゃとね。あと、プリン・ア・ラ・モードね』

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