第3話 国外脱出 ①
私は騎士に連れられて部屋の外に出ようとした時、爆発音の後に地震が起きたかのような揺れが発生した。
えっ?
何事?
私は学生達が逃げるために何かをしたのかなと思ったのだけど、学生達も全員が戸惑っている雰囲気だったので、違うのだなと思った。
そして、すぐに見たことの無い騎士が部屋に入ってきた。
「大変です! 68区画付近が何者かに爆破されました!」
「なにっ!? あそこの区画には他の奴隷達が……奴隷解放の奴らか?」
「まだそこまでは分かりませんが、もし奴隷解放だった場合は我々だけでは戦力が足りません!」
「確かにそうだな……よし、ここには2人だけを残して68区画に行くぞ!」
「分かりました!」
「召喚した奴らにはしっかりと奴隷具を付けておけよ!」
「はい!」
そう言って騎士達は部屋から慌てて出ていき、部屋には私達と騎士が2人だけになった。
「お前らには予定通り奴隷具を取り付けるから、一列に並べ!」
「「……」」
学生達の大半は騎士のいう通りに一列になって並び始めたが、騎士達には見えない場所にいた学生の4人が、チャンスだとばかりに表情を変えて、騎士の死角になる位置に隠れていた。
確かにチャンスではあるけど、大丈夫かな?
通常なら離れているとは言え背後に四人も隠れていたら、バレそうな気もするけど、さっきから部屋の外では断続的に爆破音と大きな揺れが発生しているので、騎士達にも動揺があるのか、四人には気がついていないみたいだった。
そして、列の始めの方に並んでいた学生に奴隷具と呼ばれるベルトを首に付け始めた。
奴隷具を付けられた学生は、離れた位置からでも分かる位に表情が無くなり、まるでリアルな人形の様に棒立ちになってしまった……
えっ、あれってヤバくない?
私はてっきり、奴隷具って反抗したら軽い電流が流れるみたいなものを想像していたけど、あの学生の表情を見る限りでは私の思っていたものとは別物の効果が有りそうだと思えた。
他の学生も奴隷具を付けられた学生を見て、動揺が広がりつつあった。
そして、その動揺が悪い方に働き、隠れていた学生4人は焦った感じで飛び出してしまった為、騎士のいる場所に到達する前に、騎士にバレてしまった……
「なっ!? 隠れているヤツがいたのか!」
「くそっ、バレた!?」
「仕方ないからみんなで取り押さえるぞ!」
「「おおっ!!」」
流石は同じクラスメイトだからか、隠れていた学生達が騎士にバレたタイミングで、列に並んでいた学生も一緒に騎士2人に襲いかかった。
ちなみに私も一緒に騎士に突撃した……
「くっ! こうなったら仕方がない、何人かは殺してしまえっ!」
「うおおっ!!」
学生達と騎士達の揉み合いは混戦を極め、良く分からない状況になっていた。
「いてぇ!?」
「くそっ、佐藤が刺された!」
「このやろう! まずは腕を押さえろ!」
「こうなったら魔術を……ぐふっ!」
「よしっ、騎士の武器を確保したぞ!」
騎士達の剣を学生達が取り上げる事に成功して、学生達はちょっと気を緩めた瞬間に、学生の1人が見えない攻撃により切り刻まれた……
「ぐわあああ!」
「おい、加藤!?」
「やべぇ、こいつら魔術を使ったんじゃないのか!?」
「くっ、魔術をまた使われる前に殺してしまえ!」
学生達は魔術を使われる前に騎士達を何とかしなくてはいけないのは分かっていても、目の前でクラスメイトが切り刻まれて血まみれで倒れている姿を見てしまった為に、先ほどまでの勢いで攻める事が出来なくなっていた……
これはまずいな……
私は騎士2人が一直線上になる位置まで、ヨチヨチと歩いていく。
このペンギンの着ぐるみは白木エルのこだわりで、動物の可動域を再現したらしくて、ペンギンの着ぐるみは普通に歩くのが大変だったりするのだけど、今ほど、このこだわりが邪魔だと思った事は無かった……
私は苦労しながらも、やっと騎士が一直線上になる位置まで移動する事が出来た。
そして、私は玉砕覚悟で騎士めがけて地面を滑って行った……
着ぐるみ転生。 異界に召喚されたら、着ぐるみが脱げなくなってしまった。 チョコレート @thoco
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