シーと銀河鉄道「宇宙の果て」行き

ユッキー

序章


頭上のつかなくたった正方形の和風ペンダントライト、隣の玄関ホールの琥珀色こはくいろの照明が、曇りガラスの引き戸かられる薄暗い8畳の和室…

14時46分の時刻で止まったままの四角い掛け時計、東壁にはめ込まれた大きな茶箪笥に無造作に飾られた、ペットショップではじめて愛犬シーズーのシーと出会った時に記念に撮った両腕で大事そうに抱いている写真…


晩ご飯を終え布団にもぐると、すかさずシーが、ベージュの毛布をかけた身体に勢いよく登って来て、胸の上からいつものようにおれの顔を舐め始めます。

ピンク色の小さな舌で執拗に…


長く続くのはもうわかっています、しばらく好きに舐めさせていると、一瞬、ピンク色の舌が止まって、丸くつぶらな瞳でおれの顔を覗き込みます。

それからシーは、自分の顔をほんの少しだけ斜めに傾け、おれの顔にすべてをゆだねるかのようにそっと乗せました。

びっくりしました。

ふたつの顔が融合するかのように、重なり合っています。


シー

………


寝息をたてて、どうやらシーはそのまま寝てしまいました。

顔の上で寝ています。

スースーという寝息が、薄暗くわずかに琥珀色にいろどられた部屋で、シャボン玉のように飛んで消えます。





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