SP発表会
でだ。
俺がサッジから犯罪者リストを受け取ってから、暫くの時が過ぎた。
連休を貰ったこともあって、俺はリストに載っていた犯罪者の大半を捕まえることに成功していた。
「なあ。連休中に出ていた宿題、終わったか? 一生のお願いだ! ノートを写させてくれ!」
「バカを言うな。自分でやれよ!」
教室も扉を開くと、ガヤガヤと活気のある若い声が聞こえてくる。
ふう。
相変わらずに騒がしい場所だな。学園というのは。
今日は祝日を挟んだ三連休が明けての、久しぶりの学園だった。
「あっ。アルスくん。久しぶり」
最初に俺に声をかけきたのは、青髪のショートカットが特徴的なルウという女であった。
おっとりとした柔らかい雰囲気に騙されはならない。
暫く接して分かったのだが、このルウという女は、なかなかに腹黒い面があり、気の抜けないところがあった。
「アルスくん! 今まで何処に行っていたのですか!」
続いて俺に声をかけきたのは、赤髪のお団子&ツインテールが特徴的なレナという女であった。
こっちのレナは、ルウと違って、直情的な行動派である。
優等生的な雰囲気を醸し出しながらも、無駄に行動力のあるレナはルウとは違った意味で厄介な性格をしていた。
「何処と言われても、普通に家で休んでいただけなのだが……」
「見て下さい! アルスくんから受けた課題、とっくに終わってしまったのです!」
そう言ってレナが差し出してきたのは、俺が指定した魔法関連の参考書であった。
この参考書は、休日の間でもトレーニングに励めるように俺が課題として出していたものである。
「……本当だろうな? 見せてみろ」
「もちろんです!」
ふむ。
ザッと見たところ、本当に真面目に取り組んでいるようだな。
少し驚いたな。
俺が与えた課題の量は、少なく見積もっても一カ月分のつもりで出していたのだが、まさかこの数日で終わらせてくるとは想定外であった。
「というわけで、休みの日でも連絡を取れるように住所を教えください!」
やたらと発育の良い大きな胸を張って、キラキラとした一点の曇りのない眼でレナは言う。
「……勘弁してくれ。プライベードくらい、独りでいさせてくれよ」
ひょんなことから俺は、彼女たち二人に魔法を教えるコーチ役を引き受けることになっていた。
学習意欲が旺盛なのは、結構なのだが、ヤル気があり過ぎるというのも考え物だ な。
二人への指導時間が増えた結果、ただでさえ忙しかった俺の生活は、益々と慌ただしいものになっていた。
「静粛に。それでは、朝のHRを始めようと思う」
そうこうしているウチに俺たち1Eの担任教諭であるリアラが入ってくる。
黒髪でスーツをキッチリと着こなしたリアラは、この学園では数少ない、家柄で生徒を判断しない中立主義の教師であった。
「さて。諸君らが、学園に入学してから一カ月が経つな。それでは、今から月末恒例となるSP(スクールポイント)獲得順位を発表しようと思う」
そう前置きをしたリアラは、クラスメイトたちの名前が書かれた大きな紙を貼りだしていく。
SP(スクールポイント)とは、王立魔法学園に通う生徒たちの成績を可視化した数値となる。
SPは日頃の授業態度、クエスト、試験の結果によって増減する。
この数値は、生徒たちの進級にも関わってくる他、保有ポイントによっては様々な特典が用意されているのだとか。
「まずは成績上位者から発表する」
そうこうしているうちに成績上位十名の名前が発表されたみたいである。
1位 アルス・ウィルザード SP(スクールポイント) 8500 等級 Cランク
リストの頂点に書かれていたのは他でもない俺の名前であった。
等級もDランクからCランクに昇格していた。
進級に必要な等級はB以上なので、もう少しで条件を満たせそうだな。
「「「おおおおおおおおおお!」」」
俺が一位を獲得したことが意外だったのだろうか?
教室のボルテージが一気に上がっていくのを感じた。
「嘘だろ……!? どうして庶民なんかに……!」
「あの庶民。やはり只者ではないというわけか……」
周囲の貴族たちの視線が痛い。
高位の貴族が大半を占めるクラスの中では、俺のような庶民はどうしても悪目立ちをしてしまうのだ。
「ア、アルスくん! 一体どうやって、これほどのポイントを稼いだのですか!?」
隣の席にいたレナが身を乗り出して尋ねてくる。
さてさて。
どうしたものか。
正直に答えると、サッジが入手した犯罪者リストに乗っていた小悪党を捕まえて行った結果なのだが、もちろん真実をそのまま伝えるわけにはいかない。
「まあ、休みの間にちょくちょくと、クエストをやっていた結果だな」
「えええっ……! 何時の間に……!?」
嘘は言ってないぞ。嘘は。
適当に取り繕った言葉で答えてやると、レナは目を丸くして驚いているようであった。
「凄いよ! アルスくん! この調子でいくと、学年一位も夢じゃないよ!」
「そうか。それは何よりだな」
夢も何も……。
現時点で俺が、その学年一位を獲得しているわけなのだが。
これに関しては余計な騒ぎになるだけなので、秘密にしておいた良さそうだな。
アルス・ウィルザード
所属 1E
保有SP 8500ポイント
学年順位 1/150
ランク C
念のため、そこで学生カードを確認してみる。
個人の順位、獲得SPについては、学生カードを見れば、何時でも確認することができるのだ。
「続いて十位以降の順位を発表する。以下もものは、より上位を目指して、努力をするように」
未だに熱気が冷めやらないうちにリアラは、二枚目の紙を貼りだしていた。
どれどれ。
今後の参考のため、俺以外の順位を確認してみるか。
むう。
ルウは11位。レナは13位か。
クラス全体の人数が三十人だということ考えると上位には違いないのだが、思っていたよりも伸び悩んでいるようである。
2位 ジブール・ランドスター SP(スクールポイント) 4000 等級 Dランク
ところで、この二位のジブールというのは、誰だろうか。
以前に受けた月例試験では、一位を取っても、1000ポイントしか付与されなかった。
つまり4000ポイントというのは、それなりに難易度のクエストを達成しないと獲得できない計算だった。
「やれやれ。このボクがまさか庶民に後れを取るとはね」
ふむ。
ジブールというのは、この金髪ロングヘアーの男のことか。
わざわざ席を立って自己紹介をしてくれるとは、予想外であった。
「まあ、いいさ。次の発表では、必ずこのボク、ジブール・ランドスターがトップを奪って見せる!」
前髪を掻き分けたジブールは、俺と目を合わせて、高らかに宣言をする。
なんだか、妙に意識をされているようだな。
勘弁してくれ。
俺がSPを集めているのは、授業の免除、その他の権利を得るためであって、学生同士の競争に付き合うつもりではなかったのだ。
「流石はジブールさん! 次元が違え!」
「あんな庶民! とっとと抜いちまって下さいよ!」
ジブールの一位宣言を聞いた取り巻きの貴族たちは、鼻息を荒くしているようであった。
ふうむ。
俺の目からすると、このジブールとかいう男、たいしたことがないように見えるのだけどな。
現時点での実力的でいうとレナ&ルウの方が遥かに上回っているように思える。
大量のSPを獲得したということは、何か秘密があるのだろうか?
朝のHRを通じて俺は、そんな疑問を抱くのであった。
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