表彰式
「賞状 種目 硬式テニス シングルス
優勝
春休みが明け、高校生活2回目の始業式に俺はいた。
長期休み明けだったからか眠そうにしている人達もいれば、春休みの間にどこどこに行った、恋人と遊びに行ったなどと思い出を語っている生徒たちもいた。
そんな人たちの声を聞きながら、俺はステージ上で会釈をしてステージから降りる。
テニスの大会で優勝して、表彰されていた小野寺悠というのは俺の名前だ。
この学校は1年生側から登り、3年生側から降りて、壁に沿って式が終わるまでそこで待つ。これがうちの学校の決まりみたいなものらしい。
「またあいつのために時間とられたのかよ」
そんな声が聞こえたが、聞かぬふりをして、ため息をついた。
「まだ、心の底から気持ちを込めて拍手してくれる人がどれくらいいるだろうな」
そんな事を呟いた矢先、
「実は、もう1枚あります」
校長のその発言で体育館全体が騒がしくなった。
近くにいた3年生達の視線の先にいたのは、女子バスケットボール部たちのレギュラーであろう5人が校長の前に向かって歩いていた。
俺が通っている
野球部とサッカー部の最高成績が県ベスト8とパッと見、強いと思われがちだが、もう何十年前の話だった。それなのにその成績を売りにしているのはどうかと思う。
他の部活なんて、良くて地区予選での2回戦負けだったりする。
自慢するわけではないが、小学生から全国大会に出場してはまずまずの成績を残している。
中学でも全国大会に出場して、最後の年では優勝している。
もちろん私立からの推薦もあったが、ただでさえ、テニスはお金がかかるのに、その上、私立まで行くと、さすがに家のお財布事情が厳しいため、続けたければ公立という選択肢しか無かった。
幸い、負けず嫌いは勉強にも反映されていたおかげで、家から近い、城東学校に進学できた。
そして、表彰式とは無縁に近かった学校で、去年の6月も終わりに迫った日の体育館のステージに、予選を4位通過でインターハイ出場を決め、インターハイに向けての意気込みを話している俺が立っていた。
この意気込みも、式の前に校長に呼び出されて、
「半世紀ぶりの表彰だから盛大にやりますよ。インターハイへの意気込みも言ってもらおうと思っているので考えておいてください。」
完全に校長も浮かれていて、無茶振りをさせられた。
それからというもの、大会があれば入賞しては表彰の繰り返しだった。
表彰式=小野寺とイメージが学校中で定着されつつあった時に、女子バスケットボール部が呼ばれたことにより、驚きの後、俺の時には無かった祝福ムードが体育館中に一気に漂った。
正直に言うと、最初は驚いた。
が、5人の中に1人知ってる顔がいると気づき、その驚きが一瞬にして無くなった。
「林坂か」
1年の時に同じクラスだった女子、林坂舞が他の4人と共にステージ上に立っていた。
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