57. 急な展開
教室からリルを連れて、すぐに人だかりの外へと出る。
今すぐ事情を説明しなければ。
「エリーズ。どうしたの急に?」
例のベンチまで歩いたとき、エリーズは足を止めた。何度もお世話になっているこの場所は、やはり秘密の話をするのにもってこいだ。
「ねぇ、リル。あの新入生のイケメンは、魔王だと思う。信じてもらえないかもしれないけど」
「なんでそう思ったの?」
リルは不思議そうな顔はしていたが、どうやら信じてくれるようだった。
事情が事情なだけに不謹慎だけれど、少し嬉しくかんじる。
「ただの、勘。だけど、確かだと思う」
エリーズが言うと、リルは手を顎に当てて考えるような表情をした。
「とりあえずレオンに相談する?」
「それしかないわよね」
今戦うのは、危険だ。
周りにたくさんの人がいるし、戦いの途中でその人達が犠牲になれば……なんて考えるだけで恐ろしい。
しかもこのフィエルテ学園は、この国一番の大都市のすぐ近くにあるから、余計に。
という結論になり、リルとエリーズは、レオンに電話をかけた。
どっちみち話をするならここがいい。
教室とかまで下手に行くと、話を聞かれる恐れがある。
*
「本当に、魔王がこの学校に?」
レオンは、案外すぐ来た。かなり早足で来たんだろう。少し、息が乱れている。
「えぇ、そうなの」
「魔王の方から、仕掛けてきたな。軍の用意をするのには最低でも三日かかる。三日後、魔王が魔王城にいるときを見計らって、討伐しに行こう。俺は今日帰ったら、この話を会議にかけて、準備する。エリーズとリルは、いつ戦いになってもいいように、備えておいてくれないか」
エリーズとリルは、力強く頷いた。
(決戦は三日後か)
急に早くなった展開に若干ついていけない自分が、ここは覚悟を決めるほかあるまい。
エリーズは戦いの気配が色濃く迫ってきたのを感じ、ごくりと唾を飲んだ。
ーーその夜フィエルテ学園では、五人の生徒が行方不明になった。
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