26. レオンの姉について

「俺の、姉さん?」


  レオンは、首を傾げて不思議そうな顔をしている。けれど、顔が強ばっているのを隠しきれていない。おそらくかんは当たっていのだろう。


「そう、あなたのお姉さんについて」


  言い直すと、レオンは一瞬苦虫を噛み潰したような顔をした。もしかしたら、お姉さんにマイナスな感情でも抱いているのかもしれない。


「何?」


  「前に、言ってたでしょ。神様からお告げがあった人が、学校退学になったって」


  レオンは、黙ったままだ。そのまま、一呼吸置いて続ける。


「それ、カヴァリエ君のお姉さんなんじゃないの?」


  レオンが、目を見開いた。


「どうして……」


「この前街で、見かけたものだから」


  ーーハンカチを拾ってもらった女性に、エリーズがは確かに見覚えがあった。けれどどれだけ考えてもすぐには彼女が誰か、思い出すことができず、やっと思い出せたのは、別れる間際だった。

  最後に会った時より彼女は痩せていて、質素な服を着ていた。分からなかったのは、そのせいかもしれない。

  リルの手前、その場で彼女の正体について言及することもできず、後でレオンに話を聞こうと思っていたのだ。

  が、その前に、階段から突き飛ばされる、なんてイベントが発生したため、聞くことができなかった。


「それでその時、何となく街に住んでるんじゃないかと思って」


  貴族の娘が、あんななりをするのはおかしい。それに、エリーズのことを見て泣いていた。となれば、学校を退学になり、外聞が悪いというので、家から追い出された、というので説明はつくはずだ。考えすぎかもしれないけど。

 レオンは、しばらく黙っていた。何を考えているかは分からない。けれど、少しでも力になれたらとは思う。


「そうだよ。俺の姉さんは」


  しばらくして、レオンが意を決したように、静かに口を開いた。

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