ジャマイカする
ベルリア抜きで進んでいるが今のところ問題はない。
ただいつもはそれほど気を配る必要の無かった足下にまで細心の注意を払っているせいで、進むペースはかなり遅くただ移動しているだけなのに精神が摩耗しているのを感じる。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「よろしければ、先頭をかわりましょうか?」
「いや、これは前衛の役目だから大丈夫だ」
「そうですか、いつでも言ってくださいね」
「ありがとう」
やっぱりシルは優しいな。
こういう時に気遣ってくれるのは、精神的に楽になる。
「わたしが並んで歩いてやるよ」
「いや、大丈夫だ」
「遠慮するなって」
「いや、遠慮しとく」
「もしかして照れてるのか? やっぱりわたしと並ぶと恥ずかしいのか?」
ルシェだけはダメだ。ルシェに先頭を歩かせたら大変なことになってしまう可能性が跳ね上がる。
「おい、海斗止まるんだ」
「はい?」
「よく見ろ.足下だ」
「あっ」
危ない。よく見ないとわからないけど、多分トラップだ。
あいりさんが声をかけてくれてなければ、完全に踏んでいた。
「あいりさん、ありがとうございました」
「ああ、大丈夫だ」
「マスター、よろしければ私が先頭を歩きましょうか?」
「ティターニア、ありがとう。大丈夫だから」
「いつでも言ってください。わたしはマスターのためにいるのですから」
ティターニアも優しいな。
俺は本当に恵まれてるなぁ。
「ご主人様、敵モンスターです。三体いるようですがどうされますか?」
「前に俺とあいりさん、それとシルも頼んでいいか?」
「もちろんです」
「おい海斗、わたしは? まさか忘れてるんじゃないだろうな」
「忘れるわけないだろ。ルシェは、他のじゃ……いや好きにやってくれ」
「海斗、いまの『じゃ』ってなんだ『じゃ』って!」
「じゃは……ジャマイカ?」
「ジャマイカってなんだ?」
「え〜っとジャマイカは中南米の国だけど」
「それがなんで今出てくるんだ?」
「そ、それはジャマイカは自由な感じだから、自由にやっていいって意味だったんだ」
「ふ〜ん、なんか怪しいけどまあいい。わかったぞ自由にやるのをジャマイカって言うんだな。よしジャマイカ!」
ダメだ。ジャマイカってよく思いついたけど、今はそれじゃない。
目の前のモンスターに集中だ。
シルを含めた三人の前衛で、敵モンスターへと進んでいくとモンスターを確認できたが、現れたのは先程戦ったのと同じ紫のやつだ。
正直、一番相手にしたくないモンスターだ。
ベルリアがおかしくなってしまったあの毒霧をどうにかしないと、くらったらただでは済まない。
遠距離からしとめたいところだけど、相手はメタルモンスターだ。至近から叩き込まないと倒すのは難しいだろう。
「ま〜たアイツらか。歯応えなくて面白くもない。さっさと溶けてなくなれ。ジャマイカするぞ! 『侵食の息吹』」
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