感じる
「どうしようか。時間的にはまだ早いけど、ベルリアも結構ダメージを負ったし今日はこれで切り上げてもいいかなと思うんだけど」
「そうね。それがいいと思うわ」
「マイロード! お待ちください。私はノーダメージです。このまま帰るわけにはいきません。皆様、このまま進みましょう。いや、是非進みましょう!」
「う〜ん、そう言ってもな〜」
「海斗、ベルリアにも騎士としてのプライドもあるんだろう。進んでもいいんじゃないか」
「おおっ、あいり様。わかってくれますか。さあ行きましょう」
俺としては、ベルリアの精神状態も踏まえて撤退でもいいかと考えていたが、本人の強い希望もあり結局、先に進む事となった。
「だけどあの青いやつ、強かったな。ベルリアが反応できないスキルって結構ヤバいな」
「後方から見ていましたが、突然凍っちゃった感じだったのです」
「記憶にはありませんが、おそらくは突然だったのでしょう」
「あいりさんも、青いのが出たら気をつけてくださいね。予備動作無しで発動した可能性もありますから」
「ああ、極力正面に立たないように気をつけるよ」
「明らかに他より上位のモンスターな感じなのにドロップは全く同じ魔核だけってセコイわね」
通常レアっぽいモンスターの場合、他よりも良いものがドロップされることが多いが、今回の青い狼からは他のメタルモンスターとほぼ同じ魔核がドロップしただけだった。
たしかにセコイと言うミクの気持ちもわかる。
ダンジョンの奥へと進んでいくが、奥に進むにつれ床が濡れている箇所がちらほらと現れてきた。
「キャッ」
「ヒカリン大丈夫?」
「ミクさん、ありがとうなのです。足が滑ってしまったのです」
「そうよね〜。これなら砂漠仕様の靴を履いてきた方がよかったかも」
「普通に歩いているだけでも滑りそうになるな」
氷とまでは言わないが、戦闘になればこの床はかなりハンデになりそうだ。
「どうしたシル、敵がいるのか?」
「はい。まだ、それほど近くはないと思うのですが、普通のモンスターとは違う気配を感じるような」
「まさか、また悪魔!?」
「悪魔とも違うような。むしろこれは……」
「なんだよシル、もったいぶらないで教えてくれ」
「微かに感じるだけなので、まだはっきりとはしませんが、この感じは悪魔というよりも私に近いような」
「ちょっと待ってくれ.シルに近い気配!? それって半神って事か?」
「う〜ん、微かな感じだけなので、はっきりとはわかりません」
このフロアに神に連なる敵がいるのか?
それってヤバくないか。
「ルシェ、なにか感じるか?」
「なにも感じないぞ。いや感じるな」
「本当か?」
「ああ、感じる」
「どんな感じなんだ」
「腹が減った」
「は?」
「だ〜か〜ら〜空腹を感じるって」
「感じるって空腹のことか?」
「もちろんだぞ。ほら、魔核をくれよ」
「は〜っ、お前に期待した俺が馬鹿だったよ」
「失礼なやつだな! さっさとくれよ.ベルリア炙って腹減ったの忘れてた」
「あれでか!?」
「当たり前だろ.誤魔化そうとしてたんじゃないだろうな」
「わかったよ。特別だからな」
「はいはい、特別ね。特別って言う割に魔核はいつも通り小さいな」
「文句があるなら食べなくていいんだぞ」
「あ〜うそうそ」
ルシェに聞いた俺が悪かった。ルシェが何かの気配を感じたことなんか一度もなかったのに、シルの言葉で気が動転してしまっていたのかもしれないな。
お知らせ
モブから始まる探索英雄譚7が絶賛発売中です。
bookwalker 日間10位にランクイン。
ありがとうございます。
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