すごくファンシー

「は、ああああ〜熱い、燃える! い、息が〜」

「ベルリア!」

「炎が! 炎が! 凍る!」

「ベルリア!」

「ハッ、ここは!? マイロード? 炎は? いや、しかし、夢なのか?」

「ベルリア、大丈夫か?」

「はい、これはいったい……。私はどうしたというのでしょうか。夢を見ていたような。息ができなかったような、姫様の獄炎に焼かれたような夢を見ていたような」

「うん、まあ夢ではないけどな。大丈夫そうでよかったよ」

「夢ではないとは? 確かに全身を包むこの焼けるような痛み。なにが……」


今の今まで氷に閉じ込めれていたからか、ベルリアの記憶に混濁があるようで現状を把握しきれていないようだ。


「ベルリアは、青いメタルウルフのスキルで凍らされたんだ」

「青い狼……確かに私は青い狼と相対していたような」

「俺もヤバかったけど、ベルリアは一瞬で全身凍らされてしまったんだ」

「この私が凍らされてしまったなどと、そんな馬鹿な」

「ベルリアくん、本当なのです。完全に凍ってたのです。コールドスリープだったのです」

「コールドスリープ?」

「はい完全にSFの世界だったのです」

「SFですか? すごくファンシーでしょうか」

「いや、ベルリア、たしかに近い気もするけど違うぞ。すごくファンシーってなんだよ。SFでよくそれを思いついたな」

「信じられない。この士爵級悪魔であるこの私がただのモンスター如きに凍らされるなど」


本当に凍らされてからの記憶はないみたいだ。凍らされると記憶も凍るんだな。

ある種勉強になった。


「それよりまずは火傷を治すのが先だろう。『ダークキュア』を使ったらどうだ」

「火傷……この痛みは火傷。凍傷? 『ダークキュア』」


ベルリア、その火傷は凍傷じゃない。もしかしたら凍傷もあったかもしれないけど。


「ベルリア念のために俺にも頼む」

「わかりました。マイロードもダメージを受けられたのですね。『ダークキュア』」


ベルリアのおかげで腕の痛みが完全に引いた。しばらく待っていればティターニアのスキルの効果で完治したとは思うが、ここは我慢するところじゃない。


「マイロードも凍傷になられたのですか?」

「まあ、俺のはそうだけどベルリアのは違うぞ」

「ベルリア、このわたしが氷を溶かしてやったんだ.感謝しろよ?」

「姫様が?」

「ああ、お前が無様に氷漬けになったらりするからわたしが獄炎で炙ってやったんだ」

「姫様の獄炎で助けていただいたのですか? 姫様自らこのベルリアを! このベルリア感激です。姫様この命は姫様の為に!」

「お前は暑苦しいんだよ。それだけ暑苦しかったら自分で溶かせたんじゃないのか。そもそも悪魔のくせに凍らされるってダサすぎ。悪魔の氷漬けなんか誰も喜ばないだろうが」

「はっ、このベルリア一生の不覚.申し訳ございません」


ベルリアの一生の不覚って何回あるんだろうな。

もう何回も聞いた気がするけど普通は一生に一回とかじゃないんだろうか。


「次からは凍るなよ」

「はっ、このベルリア、なにがあろうとも二度と凍りません」


ベルリア凍ったことすら覚えて無いんだから、それは約束できないだろ。

それにしてもあの青いメタルウルフのスキルは詠唱もなければ予備動作もなく発動した気がする。

ベルリアにしても本来であれば簡単に凍らされるような奴じゃない。

この階層の色付きは要注意かもしれない。



お知らせ

モブから始まる探索英雄譚7が本日24時より順次解禁です。

店舗は明日より発売! 地域によっては来週です!

是非買ってください.よろしくお願いします!

買ってもらえると来年8巻がでます。



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