俺も凍る
ブリーメタリックな狼はこちらの動きに合わせて、移動を繰り返すがその動きは、他のメタルモンスター同様に予備動作無しでのトップスピードであり、しかも軽い。
狼の特性なのか牛型などに比べても明らかに軽く速い。
どうにか距離を詰めようとするが、こちらの動きに合わせて動いているのに相手の方が速い。
『アースウェイブ』
ヒカリンが動きを止めるためにスキルを発動するが、狼の足下が沈みかけた瞬間に、その場から飛び退き避けられてしまった。
この狼、強い。
この階層のモンスターには元々やり辛さを感じてはいたが、その中でもこの狼は上位だ。
今度は『アースウェイブ』を避けた狼がこちらに向け一気に距離を詰めてきた。
アサシンの効果でなんとか直撃を避けるが、すれ違った瞬間、俺の左手がバルザードと一緒に凍りついてしまった。
「ううああああ〜」
痛い。冷たくとんでもなく痛い。
経験したことのない感覚だが左腕が氷で拘束され全く動かせない上に痛い。
「マスター、下がってください」
前触れなく腕が凍ってしまった事に動転してしまったが、ティターニアの声に従い狼とは逆方向へと後ずさるが、狼が
反転して追撃をかけてこようとするのが見える。
『ドウンッ』
ティターニアの放ったドラグナーの弾が狼を捉え、頭部の一部を削り取るが致命傷とはならない。
「ご主人様に仇なすとは許せません。今すぐ消えてしまいなさい。『神の雷撃』」
シルの雷撃が狼を撃つが、狼は雷撃を受ける瞬間咄嗟に横へと跳ね雷撃は左半身を焼くに止まった。
雷撃により左半身は溶けて爛れてはいるが、まだ動きが止まってはいない。
「チョロチョロ逃げてるんじゃないぞ。この死に損ないが! 『黒翼の風』」
狼を黒い風が覆い、斬り刻む。
さすがの狼もシルとルシェの攻撃をその身に受け、ふらふらとしている。
「これで終わりだ。『斬鉄撃』」
動きの止まった狼の下へとあいりさんが走りとどめの一撃を放ち、狼はその場で消滅した。
「ふ〜かなりの強敵だったな。手こずったがやはり色が違うのは上位個体なのか?」
「あいりさん、冷静に評価してる場合じゃないです!」
「ああ、そうだった。海斗のその左腕だが溶ける様子はないな」
「はい、全くないです」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないです。めちゃくちゃ痛いです」
「ベルリアもなんとかしないとな」
全身氷漬けのベルリアの方がやばいのはわかるが、今は自分の腕の痛みが勝り余裕がない。
「海斗、わたしがなんとかしてやろうか?」
「ルシェ、なんとかできるのか?」
「氷といえば炎だろ。獄炎で炙ればすぐに溶けるだろ」
「ちょっと待て。獄炎はダメだ。溶けるだけじゃなくて腕が燃え尽きる。そもそも主人である俺に使えるのか?」
「主人? 誰それ。できるかできないかはやってみればわかるだろ」
「いや、やめてくれ」
「じゃあどうするんだよ。ほかに方法があるのか? そのままじゃあ、凍傷とかで腕がダメになるかもな」
「ルシェ、あまりご主人様をいじめてはダメですよ」
「別にいじめてるわけじゃないぞ。ただの事実を言ってるだけだからな」
ルシェの言葉がこたえる。
俺のこの腕どうすればいいんだ。
このままじゃ本当に凍傷になってしまいそうだ。
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