似たもの姉妹

「マイロード、申し上げにくいのですが、先程の戦いでほんの少しだけ消耗してしまいました。できるなら魔核をお願いできないでしょうか」

「ああ、もちろんいいぞ。この後も頑張ってもらわないといけないからな


俺はマジック腹巻きからスライムの魔核を取り出す。


「ご主人様、私もお腹がすきました」

「ああ、シルも敵を倒してくれたからな。ほら」

「ありがとうございます」

「わたしも腹減ったぞ。早くくれよ〜」


いつもの事なのでもう何も思わないが、ルシェお前は今回の戦闘には全く参加していなかっただろ。


「それにしてもこの階層のモンスターだけど、やっぱり強いな」

「マイロード、相性の問題です。この程度の相手問題ではありません」

「いや、でもなあ。直接的な魔法も効果が薄い感じだし、硬さもあるしやりにくいと思うぞ」

「そうね。私はあまり役にたてないかも。次は『幻視の舞』を試してみるわ」

「ああ、そうしようか」


やはり、この感じの敵が続くようなら、ミクとヒカリンにはサポートに徹してもらった方がいい気がする。

おそらくスナッチも戦力外だ。


「ふふん。ここはわたしの出番だろう。次からわたしがやってやるよ」

「いけるか? 結構炎への耐性高そうだったぞ」

「バカにしてるのか? わたしの獄炎にかかれば一瞬だ! まあ見てるんだな」


まあ、前衛三人だけでは足りない場合もあるので、少し不安はあるがルシェがやる気なら頑張ってもらうのはアリだな。

俺たちは落ちた魔核を拾い探索を続ける事にする。


「流石に十九階層までくると魔核のサイズもかなり大きくなってきたな」

「大きさだけじゃないわ。色も濃くなってるし純度も高くなってるわね」

「そうだよな。見た感じだと以前遠征で落ちた平面ダンジョンの二十階層のと比べても負けてない気がするんだけど」

「多少ダンジョンによって差があるのかもね」

「たしか平面ダンジョンのが九万円はしたはずだから、これもそのくらいはしてるんじゃないか」

「それじゃあ、この三つだけでも三十万円に迫るわね」

「さすがはシルバーランクのパーティなのです。ちょっと下世話な話ですが、完全にプロクラスに稼げてるのです」

「シル様やルシェ様のおかげで、普通のパーティより格段に効率がいいからな。おふたりには感謝しかない」

「ふふっ、感謝するなら今度魔核をな」

「もちろんです」


今でも多めに渡しているのに、あいりさんからもせしめる気か。

あいりさんもいやいやって感じでもないから俺が口を出す事じゃないけど、ルシェはやっぱりルシェだな。


「ルシェ、あまり欲張ってはいけませんよ」

「なんだよ。シルはいらないんだな。じゃあシルのは無しだぞ」

「それは、また別の話ではないですか?」

「もちろんシル様にもですよ」

「そう、そうですか。それほど言われるなら頂かないのは失礼にあたりますね」

「……シル」


やっぱりシルもシルだった。

まあ、この階層の探索は二人の頑張りにかかっているところもあるし、俺の魔核も有限なのであいりさんにも感謝しておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る