やせ我慢

ヒカリンが『アースウェイブ』を発動すると、金属で出来ているであろう地面が変化を見せ、俺の目の前にいるメタルゴブリンの脚が止まった。

液化した地面に脚を取られ、俺への注意が完全にそれたのを感じ、咄嗟にバルザードを振るうが間合いが遠くダメージが浅い。


「マスター避けてください」


続くティターニアの声に反応して右側へと飛び退く。


『ギィィ〜ン』


直後、金属が擦れる音がして、メタルゴブリンの頭部が弾かれたように後方へと仰け反った。

やったか?

目の前のメタルゴブリンを注視すると、右頭頂部が銃弾で削り取られているが、まだ消滅してはいない。

頭にドラグナーの銃弾をくらっても消滅しないってどれだけ硬いんだよ。

俺はのけぞったメタルゴブリンとの距離を詰め側面から胴体へバルザードを突き入れ、切断のイメージをのせたまま横なぎに払った。

鈍い抵抗感とともにバルザードの刃が抜けると、徐々に胴体がズレて落ちた。

すぐ様、ヒカリンへと指示を飛ばす。


「ヒカリン! ベルリアにも頼む!」

「わかったのです。『アースウェイブ』」


『アースウェイブ』が効果を発揮して先程同様ベルリアの切り結んでいた敵の足下がぬかるみ、自重で沈んでいく。


「私の前で動きを止めるなど重いだけの暗愚ですね。これで終わりです。『アクセルブースト』」

「ベルリア上だ!」


上空を旋回していた鳥型のモンスターが、仕留めにかかったベルリアに向け、攻撃を仕掛けてきた。

鋼鉄の羽根がベルリアを襲う。

ベルリアは、咄嗟に発動した『アクセルブースト』のターゲットを鋼鉄の羽根へと変え牛魔刀を振るう。


「ッツツ」


捌ききれなかった羽根がベルリアに刺さる。


「私が仕留める!」


俺は庇うように、ベルリアの前へと走り、あいりさんもベルリアを越え『アースウェイブ』に脚を取られたモンスターへと迫る。

上空の鳥型が再び旋回し攻撃体勢に入ったのが見えた。

ベルリアが、攻撃をくらってしまったので、思わず前に出てしまったが、ベルリアで捌ききれなかった攻撃を俺がバルザード一本だけで対応できると思えない。


「ご主人様への攻撃など、私が許しません。堕ちなさい。『神の雷撃』」


内心焦りながら身構えたところをシルの雷撃が的確に鳥型を捉え、そのまま落下しながら消滅した。


「やあああ〜『斬鉄撃』」


最後にあいりさんが残る一体の首を刎ね、戦闘を終えた。


「ベルリア大丈夫か?」

「この程度、かすり傷です。いえ、正直傷のうちにもはいりません」

「いや、結構深く刺さってるだろ。血が出てるぞ」

「いえ、これは皮膚を貫通しただけです。私の鍛えた筋肉で弾いていますから大丈夫です」

「そうか、早く治せよ」


ベルリアの痩せ我慢も大概だな。

明らかに刺さった羽根が肉を抉り、結構な血が出ている。

俺なら痛みで大騒ぎしそうなくらいはダメージを受けているように見える。


「不意を突かれただけですので本当に大丈夫です。『ダークキュア』」


ベルリアがスキルを発動し、傷が塞がると同時に刺さった鋼鉄の羽根が落ちて消滅したが、結構な枚数刺さっていた。

そういえば本体が消滅しても刺さった羽根はすぐには消滅しないんだな。

次、鳥型と戦うことがあれば回避もしくは『鉄壁の乙女』が必須だ。



あとがき

HJ文庫モブから始まる探索英雄譚6が皆様のおかげで書籍POSランキング48位にランクインしました。

ありがとうございました。

これからも応援よろしくお願いします。

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