ジャグルの最期

「あなたは少しやり過ぎました。ご主人様にまで危害を加えるとは救いようがありません。我が主に仇なす者よ、神の怒りを知りなさい。無へ帰せ『祈りの神撃』」


え……。てっきり『神の雷撃』を使うとばかり思っていたがまさかの『祈りの神撃』

たしかにシルもいつになく怒っているのはわかる。

だけどここで『祈りの神撃』とは、完全に予想外だった。

俺の身体がうっすらと赤く光り始める。


「ううっ……」


きた! 俺の中からごっそりとなにかが抜けていくような感覚があり、その場に膝をつく。


「う……ううっ」


シルの持つ神槍ラジュネイトが赤く光り、周囲の空間が歪み始める。

シルが一気に踏み出してラジュネイトをジャグルの頭部へと突き刺す。

赤く光るラジュネイトが頭部へと触れた瞬間、ジャグルの頭部は消えて無くなった。

そして、その瞬間胴体の骨も崩れるようにして消え去った。

今度こそ終わった。だけど俺は辛い。

しばらく、虚脱感に耐えていると身体がスッと軽くなるのを感じた。

この感覚はレベルアップ!

先日のラミア戦でレベルアップしたばかりなのに、今回まさかのレベルアップ。

俺の思っていた以上にデュラハンロードであるジャグルは強敵だったのかもしれない。

そして、シル、ルシェ、ベルリアとスナッチもそれぞれ発光し始めた。

どうやら今の戦闘でサーバント全員がレベルアップしたらしい。

やはり思っていた以上にジャグルから経験値が入ってきたようだ。

俺は、その場から立ち上がって地面に落ちたバルザードを拾ってから今回のドロップを確認する。

ジャグルがいた場所には、なんと二つのドロップらしきものが落ちていた。

ひとつはかなり小さくはなっているが、ジャグルが使っていたと思われる肉切り包丁のような刀が一振り。

そしてもう一つは焼豚ではなく、一本の白い骨。

いわゆる豚骨だ。

サイズはかなり大きく肉切り包丁と同じくらいの長さがある。

だけど、この骨はどうしたらいいんだ?

ラーメンのスープの出汁にでも使うのか? いや、まさかな。


「みんなこれどうすればいいと思う?」

「持って帰れば良い出汁が取れるんじゃない」

「ミク、それ本気か?」

「だってモンスターミートがあれだけ美味しいんだから骨だって美味しいと思わない?」

「まあ、たしかに」

「とりあえず持ち帰って使い道は後で考えればいいんじゃない?」


使い道の決まらない豚骨のことは置いといて残ったのは肉切り包丁だ。

俺の雷の魔刀が完全に折れてしまったので、代わりに使いたい気持ちもあるが、バルザードと二本持ちするにはサイズが大きすぎる。

ジャグルの使っていたものと比べるとかなり小型化されてはいるが、それでもパッと見で俺の身長を超えている。

形は違うがいわゆるグレートソードの範疇に入る大きさなので片手で扱える代物ではない。

もちろんミクたちが使うはずもないし、売るしかないか。

だけど、これは魔剣の類なのか、それとも普通の剣なのかもわからないな。

魔剣だとしたら結構良い値段で売れるかもしれないので、ちょっと楽しみだ。

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