種族が違うと思う
信じられないことにジャグルの胴体が徐々に動きを取り戻し起きあがろうとしている。
「ルシール、下がるぞ!」
それを見て俺はすぐにルシェたちのいる後方へと駆ける。
残念ながらバルザードを手放し、雷の魔刀を失った今の俺にジャグルとやりあう術はない。
「なんであれで動けるのよ」
「文字通り化け物なのです」
起きあがろうとするジャグルに、ベルリアとあいりさんが剣戟を加えようと武器を振るうが、上半身を起こしただけの体勢にもかかわらず頭がある時と変わらぬ素早さで、肉切り包丁と盾でいなされてしまった。
「化け物とは失礼だな。我はデュラハンロード。頭ぐらい取れたところで死ぬはずがなかろう」
「え!?」
ジャグルの口から語られた衝撃の事実に思わず声を上げてしまうが、周りのメンバーも息をのむのがわかった。
たしかにジャグルは今デュラハンロードと口にした。
完全に、豚然としたその姿にオークの上位種だと思い込んでいた。
オークジェネラルやオークロードだと勝手にあたりをつけていたのは否定できないが、他のメンバーも今、同じ気持ちだろう。
だが、ジャグルの言葉に納得する部分も少しだけあるのも事実だ。
身体を焼かれても死なない。たしかにデュラハンの上位種なら頭が取れることもあり得る。
「デュラハンロード? オークロードか豚ロードの間違いだろ。種族間違えてるんじゃないのか? ふざけるなよ。さっさと焼けろ! 『破滅の獄炎』」
獄炎はジャグルを捉えたしかに燃えている。豚肉が焼けるようないい匂いがより増したので燃えているのは間違いないが、まだ死ぬ様子はない。
「いでよゴルダバワー」
ジャグルが声を上げるとその場に渦のようなものが現れ、そこから六本足の首無しの黒い馬二頭が引く巨大な戦車が現れた。
巨大な戦車はジャグルの横につけジャグルは、手に持つ盾を置き代わりに頭を拾い上げ、そのままその身体を戦車に収め、再び声を上げた。
「いくのだ! ゴルダバワー」
ジャグルを乗せた六本足の黒馬が引く巨大な戦車が猛然と俺たちの方に向けて走り出してきた。
あの巨大な戦車に轢かれれば間違いなく死ぬ。
「ルシール!」
「おまかせください。首無しの自然の摂理に逆らった者たちよ、お環えりください。『エレメンタルブラスト』」
ルシールの放った竜巻が巨大な戦車の突進と衝突する。
風の力に押され一瞬動きが止まったようにも見えたが、すぐに勢いを取り戻し、竜巻の中を突き切って向かってきた。
「シル! 頼んだ!」
「おまかせください。あのような不浄なものご主人様には一切近づけさせません。『鉄壁の乙女』」
『鉄壁の乙女』の光のサークルが、俺たちを包み込むが、その直後巨大な戦車を引く黒馬が勢いよく突っ込んできた。
『ドガアァアアア〜ン』
耳を劈くような破壊音が響きわたり、光のサークルと巨大な戦車が正面から衝突した。
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