ホーンウルフ戦後の会話

もう一点気がついたが、ティターニアが戦闘中は普通に喋っていた気がする。

それほど会話があった訳ではないが、明らかにいつもよりはっきりと声が聞こえた。

少しなれてきたのかもしれない。


「ふ〜っ、倒せてよかったけど、危なかった。咄嗟の攻撃を躱すことができなかった」

「ああ、かなりやばかったな。身体は大丈夫か?」

「ああ、ティターニアのスキルのおかげで大丈夫だ」

「ティターニアちゃん、マジでイイ。強いし回復までいけるって言うことなしだな」

「まあ、そうかもな。それより隼人もかなりレベルアップしてないか?」

「今はレベル16だ」

「やっぱりかなり上がってるな。だけどレベル以上に上手くなってないか?」

「海斗にそう言われると照れるけど嬉しいな」


隼人がいなかったら、もっと切迫した状況に追い込まれていたかもしれない。

隼人が邪な考えからついて来てくれて本当によかった。


「海斗先輩!」

「野村さん、もう大丈夫だ。先に進もう」

「海斗先輩が強いのは知ってましたけど私たちが手も足も出なかった相手に勝つなんてさすがです」

「いや結構ギリギリだったよ。攻撃も一回もろにくらったし」

「身体は大丈夫なんですか?」

「今は回復したから大丈夫だ。他のメンバーの人も先に進みましょう」

「理香子ちゃん、俺の活躍も見てくれた?」

「はい、隼人先輩も本当に強かったんですね。びっくりしました」

「そう? それほどでもないけどね」


野村さんの口ぶり。もしかして隼人の能力を疑っていたのか? 確かに彼女たちにの前で戦うのは今回が初めてだから、隼人の能力を披露するのも初めてだけど、隼人はあんまり信用なさそうだ。

本人は満更でもなさそうというか、顔を見る限りかなりうれしそうなのでまあいいか。


「ねえ、さっきのどう思う?」

「距離があったのもあるけど、わたしじゃ動きがよく見えなかった」

「そうよね。速すぎじゃない? あのオオカミみたいなのと普通にやりあってなかった?」

「というより普通に勝ってるもん」

「もしかして『黒い彗星』って強い?」

「わたしたちじゃモンスターの強さは、はっきりわからないけど、それでもあの戦闘と動き私の知り合いのブロンズランクの人よりすごいと思う」

「やっぱり! 『黒い彗星』は幼女を使って超絶リア充にのしあがったクズ。本人はたいしたことないって聞いたことがあるけど、そんなことないよね」

「まだ一度しか見てないけど、偶然であの敵は倒せないと思う」

「じゃあ『黒い彗星』の二つ名は伊達じゃないってことね」

「理香子が『黒い彗星』はすごい人だって言ってたけど本当だったんだ」


女の子たちが集まって、またコソコソ話しこんでいる。

いままでの経験から、たいていこういう時は、いい話ではないことが多いので触れないでおくのが一番だ。

俺は見て見ぬふりをして先を急ぐことにする。


「あれ〜みんな、なんの話ししてんのかな。もしかしてさっきの戦闘のこと? 俺の活躍みてくれた? かなり効果的だったと思うけど」

「はい、そうですね」

「はい、すごかったと思います」

「いや〜それほどでもないけどね」


俺が触れずにいたのに隼人がおかまいなしに切り込んでいった。

隼人の強心臓はある意味羨ましい。

ただ野村さんと一緒で女の子たちの反応が社交辞令感が強いというか、反応が薄めな気がする。

まあ隼人は嬉しそうだからいいけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る