葛木家の食事

リビングに行くと既に春香のパパとママが座っていて、テーブルに美味しそうな料理が並んでいる。

春香と一緒に椅子へと座る。


「やあ、勉強がんばってるかい?」

「はい! がんばっています」

「今度模試があるんだって? 成績次第でこの時期だからかなり絞られるけど高木くん大丈夫そうかい? 春香と同じ王華志望なんだろう?」

「はい、もちろんです。大丈夫です!」

「ほかに志望校とか決まってるのかい?」

「はい帝山も受けるつもりです」

「春香も帝山受けるつもりみたいなんだ。一緒だね」

「はい、一緒です!」


ヤバい。春香のパパからの質問に緊張してせっかくのご飯が美味しいのかどうかわからない。

なにか味がするのはわかるのに、脳が味にリソースを割く余裕がない。


「パパ、海斗は探索者としてもがんばってるんだから、そんなに質問ばっかりしないで」

「ああ、すまない。たまにしか会うことがないからつい」

「いえ、全然問題ありません」

「そういえば海斗くんは、学費とかも全部自分で払うそうよ。偉いわね〜」

「あ、はい、そのつもりです」


なんで春香のママがそのことを知ってるんだ。

なんでと言っても情報のソースはひとつしか考えられない。

俺の母親だ。


「高校生の時から有望ね。探索者ってすごいわね」

「いえ、すごくはないです。たまたまです」

「王華の学費をたまたまじゃ払えないわよ。春香も安心ね」

「ママ!」


春香も安心? 俺が学費を払えなくて王華に行けなくなる可能性はないって意味か?


「はい、もちろん安心です。安心してください!」

「海斗……」

「あらあら、さすがね〜。だけど探索者って命の危険があることもあるって聞いたから、頑張るのもそこそこにね」

「若いって羨ましいな。もっと若い時なら僕も探索者に興味を持ったかもしれないな。だけど継続して稼ぐのが一番大事だからね。そこはしっかりと考えた方がいい」

「はい」


春香のパパの言うことはもっともだ。

探索者はあくまでも自由業。個人事業主だ。

なんの保証があるわけでもないので、全て自分の責任だ。

今は自分の想像を超えて稼ぐことができているが、どんなイレギュラーなことが起こるかわからないのもダンジョンだ。

春香パパの言うように将来専業を考えている以上、継続性が大事だ。

今から将来に備えてしっかり貯金もしたい。


それから、春香の両親とも和やかに話をしながら食事を食べ終わった。


「それじゃあ、遅くなるのでそろそろ帰ろうと思います」

「ああ、もうそんな時間か。高木くん、今後のこともあるだろうし、また時々来て話を聞かせてくれると嬉しいな」

「はい! もちろんです」

「海斗くん、お母さんにもよろしくね」

「はい」

「じゃあ、海斗また明日ね」

「うん、また明日」


お母さんによろしくって、やっぱりかなり連絡を取り合ってるんだろうな。

それにしても、いっぱいご飯を振る舞ってもらったが、なにを食べたかほとんど思い出せない。

少しもったいなかった気もするけど、また明日もがんばろう。

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