未来のサークル活動

「お邪魔します」

「あら海斗くん、久しぶりね。もっと来てくれていいのよ。ね〜春香」

「ママ、勉強するから邪魔しないでね」

「はい、はい。邪魔なんかするわけないでしょ」


早速春香の部屋に向かうが、やっぱり部屋に、お邪魔するのは緊張する。

入ると、部屋からいい匂いがしてくる。

俺は匂いフェチではないはずだが、どうしてもいい匂いが気になってしまう。

良く見ると前回来た時には無かったシルとルシェの写真が飾ってある。


「それじゃあ、昨日の続きから始めようか」

「お願いします」


部屋は春香の部屋だが、昨日と全く同じシュチュエーションだ。

ただ俺も二日目なので多少の耐性ができた。春香のシャンプーの匂いが気にならないということは一切ないが、なんとか問題集に集中することができている。

問題を解いていると春香が話かけてきた。   


「海斗は大学生になっても探索者を続けるんだよね」

「うん、そのつもりだけど」

「ちょっと海斗が羨ましいな」

「羨ましい?」

「そこまで一生懸命になれることがあるのが羨ましいよ。私も大学生になったら何か見つかるといいなぁ」

「春香には写真もあるし、大学生になればいろんなことがあると思うから」

「私、運動には自信がないのとパパとママが許してくれないから探索者は難しいの。だから何か……」


春香にとって勉強の合間の何気ない会話だったのかもしれないが、春香が俺を羨ましいと思っていたなんてびっくりした。

しかも、あの口ぶりだともしかしたら探索者にも興味があったのかもしれない。

ミクやヒカリンと交流もあるし、それで興味が湧いたのかもしれないが、探索者になるには特別な動機と覚悟がないと続かないと思う。

今でも春香はクラスの中心で十分充実しているように見えるけど、俺に見えている以外のこともいろいろとあるんだろう。

それに大学生になると噂ではサークル活動とかがいっぱいあるらしい。春香が新しいことを見つけることもできるかもしれない。

隼人から聞いたところによると王華学園は他の大学に比べても、サークル活動は活発で、毎週のようにイベントもあるそうだ。

特に学園の女の子は人気が高く、他の大学からも頻繁に声がかかるらしい。

王華に入学すれば、春香も今以上にいろいろなお誘いがある気がする。

いや、良く考えてみると、魅力的な春香が他大学に誘われないはずがない。

新しいことを見つけるためにいろいろなことにチャレンジする過程で、男性にも声をかけられる。

まずい……


「春香! やりたいことは、じっくり探せばいいんじゃないかな。しっかり見極めて決めた方がいい。なんだったら俺も一緒に探すよ」

「海斗、いつもありがとう。私、受験でちょっと不安になってたみたい。でも、これで頑張れそうだよ。海斗がいてくれてよかった」


一緒に探すといっても、違う大学に行ってしまえば、それはかなわない。

春香を幾多の外敵から護るためにも絶対に春香の行く大学に受かってみせる。

若干の邪念と使命感をきっかけにこの日の集中力は急激に高まり、昨日よりも勉強がはかどった。

そして勉強の終了を合図に春香の両親との晩御飯が開始された。

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