首なし

お昼ご飯を食べてしっかり休憩を取ったので、再び探索を開始する。

十八階層は、若干湿度は高い気がするが、基本的に少しひんやりとしていて過ごしやすい。

やはりアンデッド系モンスターが過ごしやすい環境という事なのだろうか。


「海斗さんはお化け屋敷とか大丈夫なのですか?」

「お化け屋敷? この前久しぶりに行ったけど、大丈夫だったよ。最近のお化け屋敷は、迫力がすごかったな」

「じゃあ、お化けとか幽霊とかは大丈夫なのですね」

「いや、お化け屋敷とかダンジョンでは大丈夫だけど、地上で出たらやばいと思う」

「そんなものなのですね」

「ヒカリンは大丈夫なのか?」

「はい、大好きです。刺激がたまらないのです」


大好きなのか。そういえばこの階層に入ってからも、メンバーの三人がアンデッドに怯える素振りは一切ないので、他の二人も同じような感じなのかもしれない。

それにしても幽霊が大好きって、普通なのか? 春香はお化け屋敷でかなり騒いでいたので、やっぱり探索者を続けている女の子は、強くないと続けられないのかもしれない。

俺だって、ダンジョンでは問題なく戦えているが、地上でアンデッドが出現したらビビって逃げ出すかもしれない。


「ご主人様、モンスターが二体? いえ四体? こちらへ向かってきます」

「ん? 四体なのか?」

「申し訳ありません。はっきりわかりません」


シルが敵の数を誤ることは、ほとんど無い。どういうことだ?

いずれにしてもモンスターがこちらに向かってきているので、ベルリアと俺が前衛へと立ち迎え撃つ。

しばらくすると動物の蹄のような音と何かを引っ張るような音が聞こえてきた。

武器を構えて前方へと集中するが、間も無くモンスターの姿がはっきりとしてきた。


「ベルリア! 首がないぞ!」

「はい、ありませんね」

「馬も首がない!」

「そうですね」


俺の驚きとは異なりベルリアの返事が妙に淡白だ。

いくらモンスターとはいえ首がないんだぞ?

首無しの馬が二台。そしてその馬車を引く人型のモンスターも首が無い。

さっきカオリンにダンジョンでは大丈夫とは言ったが、これは大丈夫じゃない。

首のないモンスター。これはもう完全にホラーだ。


「海斗、落ち着け。あれはそういうモンスターだ」

「あいりさん」

「あれはデュラハンだろう」

「デュラハン!」


その名には聞き覚えがある。

アニメとかにも出てくる、俺でも知っている結構有名なモンスターだ。

ただ俺が見たアニメでは頭を手で持っていた記憶があるが、眼前に現れたモンスターはどこにも頭が無い。

リアルで見ると、他のアンデッド系のモンスターと比べてもホラー度が高めだ。

それにモンスター相手に無用な心配かもしれないが、頭が無いのに馬車を運転して大丈夫なのか?

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