パパは業界1位
おふだを重ね貼りしたキョンシーは完全に動きを止めた。
「今度は効いたのか?」
その場から後退してキョンシーの動きを観察するが全く動く気配は無い。
商売繁盛のおふだが効果を発揮してくれたようだ。
俺はバルザードを構えてから、再び踏み込んでキョンシーの身体を斬り捨てた。
キョンシーが消滅した地面には安産祈願と商売繁盛のおふだが残されたので、二枚とも拾って回収する。
「ミク助かったよ。商売繁盛のおふだって効くんだな」
「一般的な商売繁盛のおふだがどうなのかはわからないけど、パパのおふだが効かないはずないじゃない」
「俺には安産祈願と商売繁盛の差がわからないんだけど」
「そんなの私だってわからないわよ。でも私のパパは凄いからアンデッド程度問題にならないわ」
「ミクのパパって神父さんとか探索者じゃないよな」
「違うに決まってるじゃない。社長よ! 社長。創業して10年足らずで業界一位まで上り詰めたんだから」
「業界ってなんの業界か聞いてもいい?」
「魔核業界よ」
「魔核業界? 魔核って組合と国が管理してるんじゃないのか?」
「毎日大量に持ち込まれるのよ。国だけで流通賄えるわけないじゃない。ちゃんと認定された流通業者が入ってやってるのよ」
「そうなんだ」
探索者をやっていても、魔核の流通の仕組みを気にしたことなどをなかったので初めて知ったが、ミクのパパは業界一位なのか。
どおりでミクのお金持ちっぷりは突き抜けているはずだ。
俺の持ち込んだ魔核もミクのパパが取り扱ったかもしれない。
俺が戦闘を終えてミクとおしゃべりをしている間も他の3人は戦闘を継続していた。
あいりさんは除災招福のおふだを使いあっさりとキョンシーの動きを止めていたが、問題は残りの2人だった。
ルシェは『破滅の獄炎』を放ちキョンシーを燃え上がらせたが、予想通りキョンシーは獄炎に焼かれながらも普通に動いている。
ただの炎よりも遥かに高火力なのでひときわ燃え上がっており、時間が経てばそのうち燃え尽きるとは思うがとにかく危ない。超高出力のモンスターが肉弾戦を挑んでくるようなものだ。ルシェは大丈夫だと思うが、危険を察知したカオリンは、早々に逃げ出して離脱している。
ベルリアは火の魔刀が使えないので代わりに交通安全のおふだを持って戦っている。
ベルリアは達人級の身のこなしで変則的なキョンシーの攻撃を躱しつつ間合いに入った。
「これで終わりです」
ベルリアが決めゼリフと共におふだをキョンシーの頭へと貼り付けた。
決めゼリフはどうかと思うが、そこに至るまでの動きはさすがベルリア。俺が真似してもまだまだ届かない域の動きだ。
「ベルリア!」
ベルリアもおふだを貼って完全に気を抜いてしまっていたが、おふだの効果で一瞬停止したかのように見えたキョンシーが、俺の時同様に動き出しベルリアに蹴りを入れてきた。
「くっ……不覚」
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