第654話 詰み?

「ひとついいですか? 霊薬ってオークションで手に入るんですよね」

「はい、それは間違いありません。一般に流通する事はほとんどありませんので、探索者組合のオークションで手に入れるのが一番現実的です。ただこればかりは、その時のドロップ次第ですので確約はできないのです。実際にオークションで霊薬が出品されない事もあります」

「そんな……」


サーバントカードを手に入れた段階で俺は完全に目的を達成したつもりでいた。

それなのに、オークションの開催は二ヶ月以上先。しかもその時に霊薬が買えるかどうかはわからない。もしその次になると半年先……

無理だ。どう考えても無理だ。

そもそも七月二十日までカオリンの身体がもつのか?

逆にそこまで時間がかかるんだったら十八階層を攻略するという選択肢もあるが、そこまでの時間は無いという判断で一階層に全てを懸けていたのだから、それは……


「高木様、オークションに出品されますか?」

「いや……あの……」

「海斗、一旦ここは引き上げよう。オークションまでは、まだ時間もある。今決めなくてもいいだろう」

「そうよ。七月二十日じゃあ、多分……間に合わないと思う」

「……日番谷さん、今日は出直します。すいません」

「わかりました。出品の申請は三週間前まで可能ですので、必要が在ればいつでも申し出てください」

「ありがとうございます」


俺達は、一旦サーバントカードを返してもらいギルドの外へと出た。

三人共ギルドへ来た時とは全く別人のようにテンションが低くなってしまっている。


「どうすれば……」

「参ったな。縁が無かったからオークションの開催日まで把握してなかったな」

「オークション以外でカードと霊薬の売買ってできないの?」

「多分、業者を介すれば可能かもしれないけど、当然値段は倍以上になってもおかしくない。それにカードも仕入れ値で買い叩かれるだろうから金額が足りなくなると思う」

「正規の業者以外は、そもそも偽物を摑まされるリスクもあるから、現実的ではないな」

「じゃあ手は無いの? ようやくカードを手に入れたのに!」


正直、完全に詰んだ。

今までは微かな希望を持てるルートが存在していたが、それが時間というどうしようも無い壁に阻まれて完全に途絶えてしまった。


「一応カオリンのパパに、今の状況を説明して七月二十日の件も伝えてみるよ」


俺は途切れてしまった可能性を再度繋ぐ為、カオリンのパパへと電話する事にした。


「はい。高木です。はい。それで……はいそうです。香織さんは……はい。そうですか……はい。じゃあ難しいですね。……わかりました」


カオリンのパパとの電話を終えた。


「海斗……どうだった?」

「ああ、やっぱりそこまでは難しいみたいだ」

「そう……」

「海斗、時間はあとどのぐらいあるんだ?」

「体調にも日によってかなり波があるようなんですけど、二日前にかなりひどい症状が出たみたいで、一気に体力を奪われたみたいです。だから今の調子だと二ヶ月は厳しいだろうって……」

「そうか……」


やはり、俺の俺達の希望が絶たれてしまった。

本当にこれで終わりなのか?

もうカオリンを助ける術は無いのか?


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