第652話 やりました

入り口の待ち合わせ場所に着いたが、まだ他の二人の姿は見えない。

俺のマジック腹巻には先程手に入れたフェアリークイーンのサーバントカードが仕舞われている。

ついさっきまで俺の中を支配していた焦燥感はすっかり消え去り、今は達成感と充実感でいっぱいだ。

『愚者の一撃』の影響で少し身体は重いが、それ以上に心が軽い。

胃の不快感もすっかり消えている。

待っている間にもその事を実感する。

本当によかった。

しばらく待っていると、まずミクが現れた。

ミクの顔は、真っ青で泣きそうな顔をしている。


「海斗、ダメだったわ……」

「ミク、俺はいけた」

「え?」

「いや、だから俺はいけた」

「いけたってどういう意味?」

「目的を達成したって意味だけど」

「うそ……」

「嘘じゃないって。ほら」


そう言って俺はマジック腹巻からフェアリークイーンのサーバントカードを取り出してミクに手渡した。


「これは……確かに本物のサーバントカードみたいね」

「ミク、流石に俺にはここで偽物を出す勇気は無いよ」

「それはそうね。じゃあ本当に手に入れたのね」

「ああ」

「このカードは……フェアリークイーン。聞いた事は無いけど、この風貌だしレアカード間違いなしよね」

「俺もそう思う」

「しかもこの感じ、好きな人にはたまらない感じなんじゃない?」

「やっぱりそうだよな。誰か高値で買ってくれるといいけど」

「絶対いるわよ。この感じが好きなお金持ちのエロ探索者!」


ミクも俺の考えとほぼ同じらしい。やっぱりこのアイドルを更に昇華したような風貌は、その層には絶対受けるはずだ。

ミクと話しているうちにあいりさんが戻って来たが、やはり顔色が悪い。


「すまない。だめだった。もう………」

「あいりさん! 俺やりましたよ」

「やりました? 何をだ?」

「何をってこれですよ。これ」


俺はミクに渡したサーバントカードを指差す。


「これは…‥なんだ?」

「いや、あいりさんサーバントカードですよ。決まってるじゃないですか」

「うそ……」


ミクと全く同じ反応。俺ってそんなに信じられていなかったのか……。


「嘘じゃないです。ピンクゴールドのスライムが出たんですよ」

「信じられない。本当に出たのか」

「本当です」

「それを見せてもらってもいいか?」


ミクがあいりさんにサーバントカードを手渡す。


「これは……確かに新しいサーバントカードの様だな。フェアリークイーンか。聞いたことは無いが、妖精の女王、レアカードに間違いないな。しかもこの風貌、絶対に人気が出るな」

「あいりさんもそう思いますか?」

「ああ、間違いない。アニメ好きなら絶対だ! これは買いだ!」


あいりさんがこう言っているので間違いないだろう。

問題はこのカードの買い手としてその層の探索者が入札してくれるかどうかだが、ここまで条件が揃っているのでもう間違いはないだろう。

後はオークションで少しでも高く売り、そのお金で霊薬を手に入れるだけだ。

話をしているうちにミクもあいりさんも顔色が良くなってきて表情も明るさが戻ってきた。

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