第641話 鑑定結果
鑑定書を受け取る手が震える。
震える手で紙に書かれた内容を確認する。
アイテム名 ドラゴンポーション
このポーションを飲む事で一時的にドラゴンの力を得る事ができる
「…………」
これって……
「あ、ああ、あの……これって」
「高木様、このポーションは本当に珍しいものです。私も今までで三本しか見た事がありません。さすがです」
「い、いや……これは霊薬じゃ……」
「霊薬ですか? ある意味このドラゴンポーションも霊薬の一種と言えるかもしれません」
「そうじゃなくて……これって病気が治ったりしますか?」
「いえ、あくまでも戦闘用のポーションですのでそのような効果は無いと思われます」
「…………」
あぁ……終わった……
エリクサーでもソーマでもなくドラゴンポーション。
一時的にドラゴンの力を得られるなんて、なんて厨二感溢れる浪漫アイテムなんだ!
ただ、これじゃない! これじゃないんだ! 俺達に必要なのはこれじゃない!
いや、待て、まだ可能性はある。
「日番谷さん、このポーションって珍しいんですよね。じゃあ高く売れたりしますか?」
「はい、もちろん高額での買取となります」
「そうですか! いくらぐらいになりますか?」
「そうですね。ドラゴンポーションの買取金額は千二百万円となります」
「…………」
確かにポーション一本が千二百万円……
とんでもなく高額だ。
だが、これじゃ足りない! 全然足りない! 一桁違う!
本当に終わってしまった。
「高木様、どうかされましたか? 買取いたしましょうか?」
「……あ……いや、いいです」
茫然自失とはこの事なのだろう。
これに賭けていただけにショックがデカすぎる。
だがこのまま何もしないわけにはいかない。
だけど何をすればいいのかわからない。
「どうしよう……」
「………」
「十八階層を最短で攻略するしかないんじゃないか?」
「間に合いますか?」
「…………」
「なんで……なんで霊薬じゃないのよ」
このメンバーなら十八階層をクリアもできると思う。
ただそれには時間が必要だ。
間違っても明日明後日で攻略できるという事はありえない。
空気が重い。
空気の重量を肌ではっきりと感じるのはこれが初めてかもしれない。
「多分、カオリンには十八階層をクリアするまでの時間はないですよね」
「それは……」
「海斗!」
「聞いてくれ。俺は、ゴールデンウィークの残りの期間は、全部一階層に潜ろうと思う」
「一階層?」
「海斗?」
「もうこれに賭けるしかないと思う。今日までにかなりの数のスライムを倒してきたんだ。あとちょっとでメタルカラーのスライムが出るはずなんだ。シルもルシェもそれで手に入れたんだ。だから今度もレアなサーバントカードを手に入れる可能性は高いと思う。レアカードなら価値は霊薬に匹敵するはずだ」
「確かに」
「だけど、それって不確定でしょ」
「そうだけど、俺はスライムスレイヤーだから。元々俺にはこれしかなかったから、これに賭けたいんだ。俺に本当に因果律なんていうものがあるなら、きっとこれだと思う」
「…………」
俺以外には理解する事ができない理屈なのはわかるが、本当に俺にはもうこれしかない。
「わかった。私も一階層に潜ろう」
「あいりさん」
「うん、私も一階層に潜るわ」
「ミク」
こうして俺達はゴールデンウィークの残りの期間を一階層でのスライム狩りに賭ける事になった。
お知らせ
9/30日発売のモブから始まる探索英雄5ですが、地域によっては月曜以降に店頭に並ぶ書店もあるようです。
今日発表の文庫売り上げランキング500で初登場50位でした!!
なんと4巻の時も初登場は50位でした! 買ってくれた読者の方は本当にありがとうございます!
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