第614話 ブレイクタイム
赤いワイバーンに青い水竜が出てきたので次に出るのは黄色いドラゴンかもしれない。
黄色いドラゴンだと何ドラゴンだろう?
和辛子による刺激とかあれば地味にきついな。
臭いとかがあっても嫌だ。
さすがにこの位置までくると敵も一筋縄ではいかない。
「少し休憩を取ろうか」
「そうね」
「いいタイミングだろう」
はやる気持ちはあるが、ここまでで結構疲労が溜まって来ているのを感じる。
俺の場合『ドラグナー』を多用しているのでMPもかなり消費している。
後衛を一人で補っているミクも同様だろう。
カオリンとは違い俺達二人のMPは特別多いわけではないので、仮にボス部屋までたどり着けば低級マジックポーションを飲まざるをえないかもしれない。
「海斗、よかったら食べる?」
「ああ、いただきます」
俺はミクからチョコレートのかけらを貰い口に含む。
普段甘いものをそれほど食べるわけではないが、疲れた身体にチョコレートの甘さが染み渡る。
「やっぱり十七階層は、難度高めですね」
「それはそうだろう。この階層にいるのは、ほぼほぼプロの探索者だろうからな」
「そうですかね?」
「この階層まで来たらこの前のパーティもだが、泊まりが基本になるからな。アマチュアでは難しいだろうな」
「まあ、学校のついでってわけにはいかないですよね」
「海斗の『ゲートキーパー』の恩恵は計り知れないな」
「そうですね。これがなかったら転移石を買うぐらいしかなかったですね」
「私は信じられないわ。パーティさえまともに組めなかった私が十七階層。しかももう少しで十八階層って……」
確かによく考えてみると、パーティを組んでまだ一年も経っていないことを考えると今の俺はすごいことをしている。
一年前はひたすらにスライムを狩り続けていた。
今もひたすらスライムを狩っている事には変わりはないが、状況は天と地ほども違う。
一年前の俺に今の状況を伝えても絶対に信じてはくれないだろう。
「俺も今の状況は夢みたいだよ。子供の頃に夢見た探索者みたいだ。ダンジョンの下層を目指して中位種のドラゴンと剣と魔法を交えるってすごいよな」
「海斗の場合、剣と魔法っていうより浪漫武器だけどね」
「確かに。それにしてもその武器を初めに見た時は見掛け倒しのふざけた武器かと思ったが、これほど使える武器だったとは、見かけによらないとはこの事だな」
「あいりさん……見かけで判断すれば『ドラグナー』は最強ですよ。何しろ浪漫武器ですからね」
「ああ、わかってるよ。武器には浪漫も必要だな」
あいりさんも浪漫武器の素晴らしさに気づいてくれたようだ。
「私のスピットファイアも負けてないと思うけど、比べると少し小ぶりなのよね。インパクトでは完敗ね」
「まあインパクト勝負ではないけど。それにさっきの水蒸気爆発凄かったな!」
「まあ思った以上に上手くいったわね」
「スピットファイアの炎弾が水蒸気に触れた瞬間に爆発したもんな〜」
「海斗、それはちょっと違うわよ」
「え? なにが?」
「水蒸気に触れて爆発したんじゃなくて青い竜の表面の水に命中したから爆発したのよ」
「それってなにか違うのか?」
「水蒸気が爆発したっていうよりも、水が炎弾の威力で一気に蒸発して爆発した感じよ。もちろんルシェ様の獄炎で爆発しやすい状況があってこそだけどね」
「そういうもの?」
「そういうものよ」
「海斗も勉強になったな。まあ知らなくてもおそらく王華の入試にはでないと思うから問題ないだろう。それにしてもこういう時間も楽しいものだな。私もみんなとパーティになれてよかったよ」
「あいりさん……それ、いい話ですけどフラグっぽいです。末期の別れみたいですよ」
「そんなつもりはなかったんだが、シル様やルシェ様もいて私は幸せなんだ。もう思い残すことは……」
「あいりさん、からかってます?」
「ああ、冗談だ」
あいりさんの冗談はわかりにくい。
ツッコんでいいのか迷ってしまうレベルの難易度だ。
「それじゃあ、そろそろ出発しましょうか」
「そうね、残りの時間頑張りましょう」
「ああ、しっかり生還できるようにしないとな」
またわかりにくいが、あいりさんのは多分冗談だな。
ツッコんでも特に広がりもなさそうなので、あえてスルーして先を急ぐ事にする。
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