第613話 爆発
俺が放った弾丸が蒼い糸を引いて渦巻く水流の中心部分をトレースして一直線に青いドラゴンの口へと飛び込んだ。
口の中へと蒼い光が消えた瞬間、弾丸は後頭部へと抜け、青いドラゴンの頭部を完全に破壊した。
さすがのドラゴンも口の中までは、水に護られてはいなかったようだ。
あいりさんも俺と同じ箇所を『アイアンボール』で狙ったようだったが、銃弾より径の大きい鉄球で隙間を通すことは難しく、口に届く手前で水流に飲まれて攻撃が逸れてしまったようだ。
ベルリアも『ヘルブレイド』を胴体に向かって放っていたが、水に阻害されて致命傷とはならなかったようで、俺の攻撃がとどめとなった。
残りは一体のみ。
「海斗、私がやってみるわ」
「だけどミクの攻撃じゃ……」
「やってみたいことがあるのよ。ダメだったら後はお願いね」
ミクの雷の槍は無効化されるし、攻撃方法はあるのか?
不思議に思いミクをみると手にはスピットファイアが握られている。
もしかしてスピットファイアで攻撃するつもりなのか?
どう考えても小さな火球で倒せる相手ではないと思うが、俺は黙ってミクの動向を見守る。
ミクがスピットファイアの引き金を引き二発の火球が青い竜に向かって飛んでいく。
「ドガアアアア〜ン!」
火球が時間差で命中する寸前、青い竜の周りが爆発した。
「これって……」
この爆発は、カオリンの融合魔法と同じ原理か!
ルシェの獄炎に炙られて、青い竜は体表から大量の水蒸気を立ち上らせていた。
そこにミクのスピットファイアによる攻撃で着火して水蒸気爆発が起きたのだろう。
ミクの攻撃は通常の状態であれば、おそらく覆われた水に火球の攻撃が打ち消されるところを、ルシェの獄炎とのコンボでカオリンの融合魔法と同種の爆発を引き起こす事に成功した。
ミクの機転が働いた見事な攻撃だ。
「ミクやったな!」
「いえ、まだよ」
「えっ?」
かなりの爆発だったので完全にしとめたと思ったが、ミクはまだ青い竜を見据えていた。
爆発による粉塵が晴れるとそこにはボロボロになった青色だったドラゴンがいた。
今は体表が炭化して青ではなく黒い竜へと変化している。
体表を覆っていた水も爆発により全て蒸発してしまったようで今は炭化した皮膚が剥き出しとなっている。
「グゥウイイアアア〜!」
黒いドラゴンが悲痛の叫び声をあげる。
体表を護るものがなくなったドラゴンをルシェの獄炎が容赦なく蝕んでいく。
周囲を肉の焦げた匂いが立ち込める。
今度は完全に燃えているので、もう時間の問題だろう。
目線だけはドラゴンから外さず、最後まで注意を切らさないようにする。
しばらくすると表面だけでなく全身が炭化したドラゴンが崩れて消滅した。
ようやく燃え切ったようだ。
「終わったな」
「どうだ! 海斗、最後はやっぱりわたしの力だろ!」
「いや、さっきのは完全にスキルの選択ミスだ! ミクのフォローがなかったら千日手でお手上げだったぞ」
「ミクの助けなんかなくても、時間さえかければ結果は同じだったんだ! なあミク」
「はい、ルシェ様の獄炎はすごいですから」
「ほらみろ、ミクもこう言ってるだろ!」
「は〜……もう終わったからいいけどな。次からは『黒翼の風』を使ってくれよ!」
「ハイハイ、わかったって!」
それにしても中位種だけあって手強かったな。
通常の攻撃がことごとく跳ね返されてしまった。
「ご主人様、さっきのドラゴンには、次からは私も前に出た方がいいと思います」
「相手の数と出方次第だな。捌き切れない数で一斉攻撃されるとやっぱり『鉄壁の乙女』が必要になるからな」
「わかりました」
お知らせ
9/30発売のモブから始まる探索英雄譚5の予約がアマゾン、楽天等で始まりました。
よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます